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更新日:2026年2月13日
労働協約という言葉を聞いたことがあっても、具体的に何を指すのかわからない方も多いのではないでしょうか。
労働協約とは、労働組合と使用者(会社)または使用者団体の間で、労働条件等について合意し、書面により成立する協定です。
労使協定や就業規則と混同されやすいですが、それぞれ根拠法や効力が異なります。
本記事では、2026年2月時点の情報をもとづいて整理しています。
労働協約の定義から労使協定・36協定・就業規則・労働契約との違いを解説。
あわせて、有効期間、組合がない場合の扱い、作成方法まで網羅的に取り上げます。
目次
労働協約とは、労働組合と使用者(会社)または使用者団体の間で、労働条件等に関する書面により成立する協定です。
労働組合法第14条に基づき、書面を作成し、両当事者が署名または記名押印することで効力が生じます。
労働協約は労働者の権利を守る重要な制度であり、就業規則や個別の労働契約よりも優先される強い効力を持っています。
労働協約は、労働組合法第14条に定められた制度です。
同条では「労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる」と規定されています。
この規定から、労働協約の成立には3つの要件が必要であることがわかります。
これらの要件を満たさない口頭の合意には、労働協約としての効力が認められません。
最高裁判例(都南自動車教習所事件・平成13年3月13日)では、次のような判断が示されています。
書面性と署名・記名押印の要件を満たさない合意には労働協約としての規範的効力を付与できないとされました。
なお、表題が「覚書」「了解事項」「確認書」などであっても、上記の要件を満たせば労働協約として認められます。
労働協約には、その内容の範囲によって「包括協約」と「個別協約」の2種類があります。
包括協約は、賃金・労働時間・休日・休暇・安全衛生・組合活動など、労働条件全般を網羅的に定めるものです。
労使関係の基本的なルールを包括的に規定するため、「基本協約」と呼ばれることもあります。
個別協約は、賃金改定や特定の労働条件変更など、特定の事項についてのみ定めるものです。
また、「単一協約」「補充協約」とも呼ばれます。
実務上は、基本となる包括協約を締結し、必要に応じて個別協約で補完・修正する運用が一般的です。
労働協約に定められる内容は、大きく「規範的部分」と「債務的部分」に分けられます。
規範的部分とは、賃金・労働時間・休日など労働条件に関する部分です。
労働組合法第16条により、この部分には「規範的効力」が認められ、労働協約に反する労働契約は無効となります。
債務的部分とは、組合活動・団体交渉のルールなど労使関係に関する部分です。
当事者間の契約としての効力を持ちます。
| 分類 | 主な内容 |
|---|---|
| 規範的部分 | 賃金(基本給、諸手当、昇給、賞与)、労働時間、休日・休暇、安全衛生、福利厚生、人事(採用・配転・解雇) |
| 債務的部分 | 組合活動(組合事務所の貸与、掲示板、組合休暇、チェックオフ)、団体交渉手続き、争議行為に関する取り決め |
労働協約と混同されやすいものに「労使協定」と「36協定」があります。
これらは名前が似ていますが、締結主体・根拠法・効果がそれぞれ異なります。
労働協約と労使協定は、締結主体・根拠法・効果の3点で大きく異なります。
労働協約は労働組合法に基づき、労働組合との締結が必須です。
労働条件を積極的に定め、「規範的効力」を持ちます。
労使協定は労働基準法に基づき、労働者の過半数代表(過半数組合または過半数代表者)との締結で足ります。
法定基準の例外を認める「免罰的効力」のみを持ちます。
| 項目 | 労働協約 | 労使協定 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 労働組合法 | 労働基準法 |
| 締結主体 | 労働組合 | 過半数代表(過半数組合または過半数代表者) |
| 効果 | 規範的効力(労働条件を定める) | 免罰的効力(法定基準の例外を認める) |
| 届出 | 不要 | 種類により必要(36協定など) |
| 有効期間 | 最長3年 | 種類により異なる |
36協定(サブロク協定)とは、労働基準法第36条に基づく労使協定のことです。
時間外労働・休日労働を行うために必要な手続きとなります。
労働基準監督署への届出が効力発生の要件です。
労働協約との主な違いは以下のとおりです。
労働協約と労使協定を兼ねることは可能です。
過半数組合が存在する場合、その組合と締結した協定は、労使協定としての要件を満たすと同時に、労働協約としての要件も満たしうるためです。
ただし、以下の点に注意しましょう。
労働条件を定めるルールには、法令・労働協約・就業規則・労働契約があり、それぞれ効力の優先順位があります。
優先順位は「法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約」の順となっており、上位のルールに反する下位のルールは無効となります。
就業規則は使用者が一方的に作成するルールであり、労働協約は労使の合意によるルールです。
就業規則の作成・変更にあたっては、労働者の意見聴取が必要です。
ただし、労働者の同意までは求められていません。
一方、労働協約は労働組合との団体交渉を経た合意であり、労使対等の立場で締結されます。
労働基準法第92条では「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない」と規定されています。
そのため、労働協約は就業規則に優先して適用されます。
労働協約に違反する就業規則は、行政官庁(労働基準監督署長)から変更命令を受ける可能性があります。
労働契約は個々の労働者と使用者との個別契約であり、労働協約は労働組合と使用者との集団的合意です。
労働組合法第16条では「労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする」と規定されています。
これは労働協約の「規範的効力」と呼ばれ、以下の2つの効力があります。
また、労働契約に定めがない部分についても、労働協約の基準が適用されます。
労働条件に関するルールの優先順位は以下のとおりです。
| 優先順位 | ルール | 根拠 |
|---|---|---|
| 1位 | 法令(強行法規) | 労働基準法など |
| 2位 | 労働協約 | 労働組合法第16条、労働基準法第92条 |
| 3位 | 就業規則 | 労働契約法第12条・第13条 |
| 4位 | 労働契約 | 労働契約法第7条 |
この優先順位により、法令に反する労働協約は無効です。
労働協約に反する就業規則も効力を持ちません。
さらに、就業規則の基準に達しない労働契約も無効となります。
ただし、労働契約で就業規則を上回る有利な条件を定めている場合は、労働契約の条件が適用されます。
これは、就業規則が最低基準を定めるものであり、それを上回る条件を定めることが認められるためです。
労働協約の有効期間には法律上の制限があります。
実務で労働協約を締結・管理する際には、有効期間のルールを正しく理解しておくことが重要です。
労働組合法第15条第1項では「労働協約には、三年をこえる有効期間の定をすることができない」と規定されています。
また、同条第2項では「三年をこえる有効期間の定をした労働協約は、三年の有効期間の定をした労働協約とみなす」と規定されています。
つまり、労働協約の有効期間は最長3年であり、仮に5年などの期間を定めても、法律上は3年とみなされます。
この制限が設けられている理由は、労使関係の硬直化を防ぎ、定期的な見直しの機会を確保するためです。
有効期間を定めずに労働協約を締結することも可能です。
この場合、労働組合法第15条第3項・第4項により、当事者の一方が署名または記名押印した文書で90日前に予告することで解約できます。
労働協約に自動更新条項を設けることは可能です。
例えば「本協約の有効期間満了の1ヵ月前までに、いずれかの当事者から改廃の申出がない場合は、同一条件で更新する」といった条項を定めることができます。
ただし、自動更新後の有効期間も最長3年の制限を受けます。
また、労働組合法第15条第3項後段では「一定の期間を定める労働協約であつて、その期間の経過後も期限を定めず効力を存続する旨の定があるものについて、その期間の経過後も、同様とする」と規定されています。
つまり、有効期間経過後も効力を存続させる定めがある場合は、期間経過後は90日前予告で解約できることになります。
労働組合がない会社では、労働協約を締結することができません。
また、公務員には労働協約の締結に制限があります。
労働組合法第14条で、労働協約は「労働組合と使用者又はその団体との間」で締結するものと明確に定められています。
したがって、労働組合がない場合は、労働協約を締結することができません。
なお、労働組合とは、労働組合法第2条の要件を満たす団体を指します。
単なる従業員の親睦団体(社員会、互助会など)は労働組合に該当しません。
そのため、これらの団体と締結した合意は労働協約としての効力は認められません。。
ただし、企業内に労働組合がなくても、合同労組(ユニオン)など企業外の労働組合との締結は可能です。
労働組合がない場合は、労使協定や就業規則で労働条件を定めることになります。
ただし、労使協定は免罰的効力のみ持つ制度です。
法定基準の例外を認める点に、役割が限定されます。
一方、就業規則は使用者の一方的変更が可能です。
このように、労働協約とは効力の性質が異なります。
労働条件の集団的決定・変更する場面では、労働者側に有利なルール設計が重要です。その手段として、労働組合の結成を検討する選択肢も考えられます。
公務員には労働基本権の制約があり、一般職の国家公務員・地方公務員は労働協約の締結権(協約締結権)が認められていません。
| 区分 | 団結権 | 団体交渉権 | 協約締結権 | 争議権 |
|---|---|---|---|---|
| 国家公務員(非現業) | ○ | △(制限あり) | × | × |
| 地方公務員(非現業) | ○ | △(制限あり) | × | × |
| 警察職員・消防職員 | × | × | × | × |
| 現業公務員・独立行政法人職員等 | ○ | ○ | ○ | × |
例外として、行政執行法人(旧特定独立行政法人等)職員、地方公営企業職員、単純労務職員には協約締結権が認められています。
一般職の公務員については、協約締結権の代償措置として人事委員会の給与勧告制度が設けられています。
労働協約を締結する際には、法定の要件を満たす必要があります。
ここでは、成立要件、作成手順、記載例を解説します。
労働協約の成立には、以下の要件をすべて満たす必要があります。
口頭の合意や、署名・押印を欠く文書には、労働協約としての効力が認められません。
また、締結権を有する者が締結する必要があります。
使用者側は代表権を有する者(代表取締役など)または権限を委任された者、組合側は規約で定められた者(委員長など)が署名・押印します。
労働協約の作成は、以下の5つのステップで進めます。
使用者は、労働組合からの団体交渉の申入れを正当な理由なく拒否することはできません(労働組合法第7条第2号・不当労働行為)。
労働協約には、以下の事項を記載するのが一般的です。
表題は「労働協約」でなくても、要件を満たせば労働協約として認められます。ただし、内容を明確にするため、「労働協約」または「労働協約書」という表題を使用するのが一般的です。
労働協約について、よくある質問をまとめました。
労働協約違反そのものに対する直接の罰則規定はありません。
ただし、労働協約に反する就業規則に対しては、行政官庁(労働基準監督署長)が変更命令を出すことができます(労働基準法第92条第2項)。
この変更命令に従わなかった場合は、30万円以下の罰金が科されます(労働基準法第120条)。
また、民事上は労働協約に違反した使用者に対して損害賠償請求が認められる可能性があります。
さらに、使用者が労働協約を無視して一方的に労働条件を変更した場合は、不当労働行為(労働組合法第7条)に該当するリスクもあるため注意が必要です。
原則として、その労働協約を締結した労働組合の組合員のみに効力が及びます。
ただし、例外として「一般的拘束力」の制度があります。労働組合法第17条では、一つの事業場で常時使用される同種の労働者の4分の3以上が労働協約の適用を受ける場合、非組合員にも拡張適用されると規定されています。
さらに、労働組合法第18条では「地域的の一般的拘束力」として、一つの地域で大部分の同種の労働者が適用を受ける場合に、厚生労働大臣または都道府県知事の決定により、地域全体の同種労働者にも拡張適用される制度が定められています。
労働協約自体に届出義務はありません。労働組合法上、行政機関への届出は効力発生の要件とされていないためです。
ただし、労働協約が36協定など届出義務のある労使協定を兼ねている場合は、その労使協定としての届出が別途必要になります。
届出は不要ですが、締結した労働協約を組合員に周知し、原本を適切に保管しておくことは実務上重要です。紛争が生じた際の証拠となるため、署名・押印のある原本を労使双方で保管しておきましょう。
労働協約による労働条件の不利益変更は、原則として可能とされています。労働協約は労働組合という集団的な合意に基づくため、個々の組合員を拘束する効力が認められるためです。
ただし、判例上は限界があります。最高裁(朝日火災海上保険事件・平成9年3月27日)は、特定の組合員を殊更に不利益に取り扱うことを目的とした場合や、労働協約の締結目的を逸脱して締結された場合には、規範的効力が否定される場合があると判断しました。
つまり、組合全体の利益を考慮した合理的な範囲であれば不利益変更は認められますが、一部の組合員だけを狙い撃ちにするような変更は無効となる可能性があります。
労働協約が期間満了や解約によって失効した場合でも、それまで労働協約によって定められていた労働条件は、直ちに消滅するわけではありません。
これは「余後効(よごこう)」と呼ばれる考え方で、労働協約が失効しても、新たな労働協約の締結や就業規則の変更がなされるまでは、従前の労働条件が個々の労働契約の内容として維持されると解されています。
ただし、余後効については明文規定がなく学説上も議論があるため、実務上は労働協約の失効前に新たな協約の締結交渉を行い、空白期間が生じないよう対応することが重要です。
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