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無給で休職したら社会保険料はどう払う?払えない場合の現実的な対応策

更新日:2026年3月24日

無給で休職したら社会保険料はどう払う?払えない場合の現実的な対応策

休職中に給与が出なくなると「社会保険料はどうなるの?」「どうやって払えばいいの?」と不安になる方も多いでしょう。

結論から言うと、休職中でも社会保険料の支払い義務は継続します。無給であっても免除されるわけではありません。

本記事では、2026年3月時点の最新情報をもとに、休職中の社会保険料の金額や支払い方法、払えない場合の具体的な対処法を解説します。

傷病手当金との関係や厚生年金への影響、会社が立て替えた場合の法的注意点、年末調整・確定申告での扱いまで網羅しました。

休職中または休職を検討している方、休職者対応を行う企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

休職中の社会保険料|3つのポイント
  • 支払い方法は3つ:①毎月会社に振込 ②傷病手当金から支払い ③会社立替→復職後返済
  • 免除されるのは産休・育休のみ:病気やケガ・うつ病による休職では免除制度はない
  • 負担は労使折半:「全額自己負担」は誤解。従業員が払うのは約半分のみ
この記事で分かること
  • 休職中でも社会保険料の支払い義務は発生する
  • 休職中の社会保険料はいくらかかるのか(具体的な金額例)
  • 休職中の社会保険料の3つの支払い方法
  • 傷病手当金と社会保険料の関係(相殺・免除の可否)
  • 休職中の厚生年金はどうなるのか
  • 会社が立て替えた場合の回収方法と法的注意点
  • 休職中の社会保険料が払えない場合の現実的な対処法

休職中でも社会保険料の支払い義務は発生する

休職中であっても、雇用契約が継続している限り、社会保険(健康保険・厚生年金)の被保険者資格は維持されます。

そのため、社会保険料の支払い義務は免除されません

無給だからといって社会保険料がゼロになるわけではなく、休職前と同額の保険料が発生し続けます。

無給でも社会保険料が免除されない理由

休職中でも社会保険料が免除されないのは、雇用契約が継続し被保険者資格が維持されているためです。

健康保険法第161条厚生年金保険法第82条では、被保険者と事業主の双方に保険料の納付義務が定められています。

休職は法律上の制度ではなく、あくまで会社の就業規則に基づくもの。休職中であっても雇用契約自体は継続しています。

また、社会保険料は実際の給与額ではなく「標準報酬月額」を基準に計算されます。

標準報酬月額は毎年4〜6月の給与平均から決定され、休職中でも原則として変更されません。そのため、無給であっても保険料の金額は休職前と変わらないのです。

社会保険料が免除されない法的根拠
  • 健康保険法第161条:被保険者と事業主双方に納付義務
  • 厚生年金保険法第82条:被保険者と事業主双方に納付義務
  • 休職は法律上の制度ではなく、雇用契約は継続
  • 社会保険料は標準報酬月額で計算されるため、無給でも変わらない

休職中の社会保険料は誰が払うのか

社会保険料の納付義務は法律上「事業主(会社)」にあります

健康保険法第161条・厚生年金保険法第82条で、従業員負担分も含めて事業主に納付義務が課されています。

ただし、従業員負担分については本人が会社に支払う必要があります。

会社は従業員から徴収した分と会社負担分を合わせて、年金事務所や健康保険組合に納付します。

休職中の従業員からの徴収方法としては、以下のようなパターンがあります。

休職中の社会保険料の徴収パターン
  • 毎月、本人が会社の指定口座に振り込む
  • 傷病手当金から社会保険料を差し引いて支給する
  • 会社が一時的に立て替え、復職後に給与から控除する

従業員負担分の徴収ができなくても、会社は全額を納付する義務があります。そのため、会社は休職前に徴収方法を従業員と取り決めておくことが一般的です。

会社負担分と自己負担分の内訳

社会保険料は「労使折半」、つまり会社と従業員で半分ずつ負担します。

休職中であってもこの負担割合は変わりません。

「休職中は全額自己負担になる」と誤解している方もいますが、それは間違いです。

従業員が支払うのは自己負担分(約半分)のみで、会社負担分を払う必要はありません。

なお、雇用保険料は支払われる給与額に対してかかるため、無給の場合は発生しません。

■負担分内訳
項目 負担割合 休職中の扱い
健康保険料 労使折半(50%ずつ) 変更なし
介護保険料(40歳以上) 労使折半(50%ずつ) 変更なし
厚生年金保険料 労使折半(50%ずつ) 変更なし
雇用保険料 給与に応じて負担 無給なら発生しない

休職中の社会保険料はいくら?計算法と具体例

休職中の社会保険料がいくらになるかは、休職前の給与をもとに決まる「標準報酬月額」によって異なります。

一般的なサラリーマンの場合、健康保険料と厚生年金保険料を合わせて月額3〜5万円程度の自己負担が発生します。具体的な計算方法と金額例を表で紹介します。

社会保険料の計算方法と標準報酬月額

社会保険料は以下の計算式で求められます。

社会保険料(自己負担分)= 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2

標準報酬月額とは、毎年4〜6月に受け取った給与の平均額を、一定の区分(等級)に当てはめたものです。健康保険は50等級、厚生年金は32等級に区分されています。

この標準報酬月額は、毎年7月に行われる「定時決定」で見直され、9月から翌年8月まで適用されます。

休職による給与減少があっても、「随時改定」の要件(固定的賃金の変動+2等級以上の変動)を満たさなければ変更されません。

つまり、休職前の給与水準をもとに計算された保険料が、休職中もそのまま適用されるのです。

休職中の社会保険料の具体的な金額例

以下は、協会けんぽ(東京都・令和7年度)に加入している場合の社会保険料の目安です。40歳未満と40歳以上で介護保険料の有無が異なります。

例えば月収30万円(標準報酬月額30万円)の40歳未満の方の場合、毎月約42,000円の自己負担が発生します。休職が半年続くと、約25万円もの社会保険料を支払う必要があるのです。

■月収別の社会保険料シミュレーション(自己負担分)
標準報酬月額 健康保険料 介護保険料(40歳以上) 厚生年金保険料 合計(40歳未満) 合計(40歳以上) 会社負担分(同額)
20万円 約9,910円 約1,590円 約18,300円 約28,210円 約29,800円 約29,800円
26万円 約12,883円 約2,067円 約23,790円 約36,673円 約38,740円 約38,740円
30万円 約14,865円 約2,385円 約27,450円 約42,315円 約44,700円 約44,700円
36万円 約17,838円 約2,862円 約32,940円 約50,778円 約53,640円 約53,640円
41万円 約20,316円 約3,260円 約37,515円 約57,831円 約61,091円 約61,091円

※健康保険料率9.91%、介護保険料率1.59%、厚生年金保険料率18.3%で計算(2025年度・東京都の場合)

※「会社負担分」は40歳以上の場合の金額。自己負担と同額を会社も負担するため、全額自己負担にはなりません。

住民税など社会保険料以外の負担も確認

社会保険料以外に忘れてはならないのが住民税です。住民税は「前年の所得」に対して課税されるため、今が無給であっても支払い義務は継続します。

休職中に「発生するもの」と「止まるもの」を整理すると以下の通りです。

■休職中に発生する支払い
項目 休職中(無給)の支払いの有無
社会保険料(健康保険・厚生年金) 休職前と同額が発生
住民税 前年所得に基づき課税(支払い必要)
所得税 給与がなければ発生しない
雇用保険料 給与がなければ発生しない

通常、住民税は給与から天引き(特別徴収)されていますが、休職で給与がなくなると天引きができなくなります。 そのため、「会社から届く納付書を使って自分で払う(普通徴収)」か、「会社に立て替えてもらう」かの確認が別途必要になります。

放置すると市区町村から督促状が届く原因になります。社会保険料の相談と一緒に「住民税はどうすればいいですか?」と人事に一言聞いておきましょう。

休職中の社会保険料の支払い方法3つ

休職中の社会保険料をどうやって支払うかは、会社との取り決めによって異なります。

主な方法は「毎月振込」「傷病手当金から支払い」「会社立替+復職後返済」の3つです。

それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の状況に合った方法を選びましょう。

毎月会社に振り込む方法

最も一般的な方法は、会社が指定する期日までに毎月銀行振込で支払う方法です。

会社から毎月請求書が届き、指定口座に振り込む形が多いです。

毎月払うことで滞納を防ぎ、復職後の負担を軽減できます。

振込手数料は通常本人負担となります。

毎月振込のメリット・デメリット
  • メリット:滞納を防げる、復職後の負担が軽い
  • デメリット:毎月の支払い手続きが必要、振込手数料がかかる
  • 向いている人:貯蓄がある方、傷病手当金を受給している方

傷病手当金から支払う方法

病気やケガで休職している場合、健康保険から傷病手当金(給与の約2/3)が支給されます。

この傷病手当金から社会保険料を支払うことが可能です。

傷病手当金は「標準報酬月額÷30×2/3」が1日あたりの支給額です。例えば標準報酬月額30万円の場合、1日あたり約6,667円、月額では約20万円が支給されます。

支給期間は、支給開始日から通算して最長1年6ヶ月です(2022年1月以降は通算化されています)。

傷病手当金から支払う方法
  • 傷病手当金を受け取り、そこから自分で社会保険料を振り込む
  • 会社が傷病手当金を受け取り、社会保険料を差し引いて残額を本人に振り込む

会社によっては、傷病手当金の受取先を会社にして、社会保険料を差し引いた残額を本人に振り込む方法を取ることもあります。

どちらの方法を取るかは、会社との取り決め次第です。詳しくは「傷病手当金と社会保険料の関係」で解説しています。

会社に立て替えてもらい復職後に返済する方法

資金が不足している場合、会社に社会保険料を立て替えてもらい、復職後に給与や賞与から分割で返済する方法もあります。ただし、会社の同意と事前の取り決めが必要です。

法律上、社会保険料の納付義務は事業主にあるため、立替自体は可能です。

しかし、復職後の給与・賞与からの控除には、労使協定(労働基準法第24条協定)と本人同意が必要になります。

会社立替のメリット・デメリット
  • メリット:休職中の支払い負担がない
  • デメリット:復職後に一括または分割で返済が必要
  • 注意点:退職した場合、会社が立替金を回収できないリスクがある

退職した場合に回収できないリスクがあるため、会社が立替に応じないケースもあります。

事前に会社の人事・総務部門に確認しておきましょう。立替時の法的注意点については「会社が立て替えた社会保険料の回収方法と法的注意点」で詳しく解説しています。

■支払い方法別メリット・デメリット
支払い方法 メリット デメリット 向いている人
毎月振込 滞納を防げる 毎月の手続きが必要 貯蓄がある方
傷病手当金から支払い 収入がなくても支払える 傷病手当金の受給が条件 病気・ケガで休職中の方
会社立替 休職中の負担なし 復職後に返済が必要 資金が不足している方

傷病手当金と社会保険料の関係

病気やケガで休職中の方にとって、傷病手当金は重要な収入源です。しかし、傷病手当金を受給していても社会保険料は免除されません

ここでは、傷病手当金と社会保険料の関係を整理し、実際に手元にいくら残るかをシミュレーションします。

傷病手当金受給中も社会保険料は免除されない

「傷病手当金をもらっていれば社会保険料は免除されるのでは?」と考える方もいますが、傷病手当金の受給と社会保険料の免除はまったく別の制度です。

社会保険料が免除されるのは産前産後休業・育児休業中のみであり、傷病手当金の受給は免除の要件に該当しません。

傷病手当金はあくまで「所得保障の給付」であり、保険料の減免制度ではないことを理解しておきましょう。

傷病手当金から社会保険料を相殺する仕組み

傷病手当金から社会保険料を支払う方法は、大きく2つあります。

傷病手当金と社会保険料の相殺方法
  • 方法①:本人受取→自分で振込:傷病手当金を本人口座で受け取り、そこから毎月会社に社会保険料を振り込む
  • 方法②:会社受取→差引支給:傷病手当金の受取先を会社にして、社会保険料・住民税を差し引いた残額を本人に振り込む(受領委任払い)

方法②の「受領委任払い」は、従業員にとって振込の手間がなく、支払い忘れも防げるメリットがあります。

ただし、この方法を取るには従業員本人の同意書(委任状)が必要です。会社が一方的に傷病手当金を受け取ることはできません。

傷病手当金の支給額と社会保険料の差額シミュレーション

実際に傷病手当金から社会保険料を差し引くと、手元にいくら残るのでしょうか。月収別にシミュレーションしました。

■傷病手当金と社会保険料の差額(40歳未満・月額)
標準報酬月額 傷病手当金(月額) 社会保険料(自己負担) 手元に残る金額
20万円 約133,340円 約28,210円 約105,130円
26万円 約173,342円 約36,673円 約136,669円
30万円 約200,010円 約42,315円 約157,695円
36万円 約240,012円 約50,778円 約189,234円
41万円 約273,347円 約57,831円 約215,516円

※傷病手当金=標準報酬月額÷30×2/3×30日で概算。実際は暦日数により変動します。

月収30万円の場合、傷病手当金から社会保険料を差し引いても約15万円が手元に残る計算です。住民税の支払いも考慮すると、生活設計は余裕を持って行いましょう。

休職中の社会保険料は免除・減額できるのか

「休職中だから社会保険料が免除されるのでは?」と期待する方も多いですが、残念ながら病気やケガによる休職では免除されません

免除が認められるのは産休・育休のみです。

ただし、状況によっては国民健康保険への切り替えで負担が減る可能性もあります。

産休・育休中は社会保険料が免除される

産前産後休業(産休)と育児休業(育休)中は、届出により健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。

免除期間中も、保険料を納めたものとして扱われるため、将来の年金額に影響はありません。

産休・育休の社会保険料免除の条件
  • 産休:産前42日(多胎妊娠は98日)、産後56日の期間が対象
  • 育休:月末時点で取得している場合、または同月内に14日以上取得した場合に免除
  • 届出:事業主が「産前産後休業取得者申出書」「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構に提出

病気やケガによる休職では免除されない

病気やケガ、うつ病などの精神疾患による休職では、社会保険料の免除制度はありません。

傷病手当金を受給していても、社会保険料は通常通り支払う必要があります。

社会保険料免除の法的根拠があるのは産休・育休のみで、病気休職での免除は2026年現在、制度として存在しません。

傷病手当金はあくまで「給付」であり、社会保険料免除とは別の制度です。

■休職の種類と免除の有無
休職の種類 社会保険料の免除 備考
産前産後休業(産休) 免除される 届出が必要
育児休業(育休) 免除される 届出が必要、条件あり
病気・ケガによる休職 免除されない 傷病手当金の受給は可能
うつ病などの精神疾患 免除されない 傷病手当金の受給は可能
自己都合の休職 免除されない 傷病手当金の対象外

国民健康保険への切り替えで負担が減るケースも

退職して国民健康保険に切り替えた場合、前年の所得が低ければ保険料が減額されることがあります。

国民健康保険料は前年所得に基づいて計算されるためです。

ただし、退職すると厚生年金の被保険者資格を失い、国民年金に切り替わります。

将来の年金額が減る可能性があるため、慎重な判断が必要です。詳しくは「休職中の厚生年金はどうなる?」をご覧ください。

退職して国民健康保険に切り替える場合の注意点
  • 退職日まで1年以上被保険者であった場合、傷病手当金は継続受給できる
  • 国民健康保険料は所得に応じて減免される可能性がある
  • 厚生年金から国民年金に切り替わると、将来の年金額が減る可能性がある
  • 退職後の健康保険は「任意継続」「国保」「家族の扶養」から選択可能

退職を検討する場合は、社会保険労務士や自治体の相談窓口に相談することをおすすめします。

休職中の厚生年金はどうなる?

休職中の社会保険料のうち、特に気になるのが厚生年金への影響です。「休職中も厚生年金を払い続ける意味はあるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。

休職中も厚生年金の加入は継続する

休職中であっても、雇用契約が継続している限り厚生年金の被保険者資格はそのまま維持されます。

厚生年金保険料も休職前と同額を支払い続けることになりますが、その分、加入期間と報酬に応じた年金額が将来の受給額に反映されます。

「休職中は保険料を払うだけ損」ではなく、将来の年金を積み上げている期間でもあるのです。

将来の年金受給額への影響

厚生年金の受給額は「加入期間」と「標準報酬月額の平均」で決まります。

休職中も厚生年金に加入し続けているため、加入期間は途切れず、休職前の標準報酬月額がそのまま反映されます。

仮に退職して国民年金に切り替えた場合と比較すると、厚生年金を維持したほうが将来の年金額は多くなります。

休職中の厚生年金と年金額の関係
  • 休職中も加入期間にカウントされる
  • 標準報酬月額は休職前の金額がそのまま適用
  • 退職して国民年金に切り替えると、報酬比例部分の積み上げが止まる
  • 障害年金・遺族年金の受給要件にも加入期間が影響する

厚生年金と国民年金の違い(切り替え時の注意点)

退職して国民年金に切り替える場合、以下の違いを理解しておく必要があります。

■厚生年金と国民年金の比較
項目 厚生年金(在職中) 国民年金(退職後)
保険料 標準報酬月額×18.3%÷2 月額17,510円(2025年度)
年金額 基礎年金+報酬比例部分 基礎年金のみ
障害年金 障害厚生年金(1〜3級) 障害基礎年金(1〜2級のみ)
遺族年金 遺族厚生年金あり 遺族基礎年金のみ

特に注意すべきは障害年金の等級です。厚生年金加入中に初診日がある場合は3級まで対象ですが、国民年金では2級までしか対象になりません。休職中に退職を検討する際は、この点も考慮しましょう。

休職中の社会保険料が払えない場合の対処法3つ

休職が長引き、貯蓄も傷病手当金も底をついてしまった場合、社会保険料が払えなくなる事態も想定されます。

そんなときは一人で抱え込まず、まず会社に相談することが重要です。分割払いや猶予、傷病手当金の活用など、現実的な対処法を解説します。

会社に分割払いや猶予を相談する

社会保険料が払えない場合、まずは会社の人事・総務部門に相談しましょう。

分割払いや支払い猶予に応じてもらえるケースもあります。

会社は従業員負担分を含めて社会保険料を納付する義務があるため、未払いは会社にとってもリスクです。

そのため、従業員と協力して解決策を探る姿勢があることが多いです。

分割払いの取り決めを書面で交わすことで、双方のトラブルを防げます。

会社によっては一時的な立替に応じる場合もあるので、まずは相談してみましょう。

傷病手当金の受給を申請する

病気やケガで休職している場合、傷病手当金を申請していない方は早急に手続きしましょう。給与の約2/3が最長1年6ヶ月支給されるため、社会保険料の支払い原資になります。

標準報酬月額30万円の場合、社会保険料を差し引いても生活費として約15万円程度は手元に残る計算です。

傷病手当金の支給要件
  • 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  • 仕事に就くことができないこと
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  • 休業した期間について給与の支払いがないこと

それでも払えない場合の最終手段

どうしても払えない場合は、以下のような選択肢を検討する必要があります。

ただし、それぞれにデメリットがあるため、社会保険労務士や自治体の相談窓口に相談することをおすすめします。

最終手段として検討する選択肢
  • 退職して国民健康保険・国民年金に切り替える(傷病手当金は継続受給可能な場合あり)
  • 生活保護の申請を検討する(医療扶助で医療費が無料になる)
  • 自治体の生活困窮者自立支援制度を利用する

退職後も傷病手当金は継続受給できます(退職日まで1年以上被保険者であった場合)。

国民健康保険料は所得に応じて減免される可能性もあります。

会社が立て替えた社会保険料の回収方法と法的注意点

休職中に従業員が社会保険料を支払えない場合、会社が立て替えるケースがあります。しかし、立替金の回収には労働基準法上の制約があるため、正しい手順を踏む必要があります。

企業担当者の方は特に、以下の法的注意点を押さえておきましょう。

労基法24条(全額払いの原則)と相殺の条件

労働基準法第24条は「賃金は全額を直接労働者に支払わなければならない」と定めています(全額払いの原則)。

そのため、会社が復職後の給与から一方的に立替金を差し引くことは原則として違法です。

ただし、以下の条件を満たせば、給与からの控除が認められます。

給与からの控除が認められる条件
  • 労使協定の締結:過半数代表者との書面による協定で「社会保険料立替金の控除」を明記
  • 本人の同意:控除の内容・金額・期間について書面で個別同意を取得
  • 合理的な控除額:生活に支障がない範囲での分割控除(一括控除は避ける)

最高裁判例(日新製鋼事件・平成2年11月26日)では、労働者の自由な意思に基づく同意があれば相殺も有効とされていますが、同意の任意性が厳しく審査されるため、書面での合意が不可欠です。

相殺合意書・労使協定の締結方法

社会保険料の立替金を回収するためには、休職前の段階で相殺合意書を取り交わしておくことが重要です。

相殺合意書に記載すべき事項
  • 立替の対象期間と対象項目(健康保険料・厚生年金保険料・住民税等)
  • 返済方法(復職後の給与・賞与からの分割控除、退職時の精算方法)
  • 毎月の控除額の上限(生活に支障のない範囲)
  • 退職した場合の精算方法(退職金からの控除、一括返済等)
  • 本人の自由意思による同意である旨の記載

また、就業規則や休職願の書式に「休職中の社会保険料の取扱い」を明記しておくと、トラブル防止に効果的です。

回収不能になった場合の損金処理

休職中の従業員がそのまま退職し、立替金の回収が困難になるケースもあります。

この場合、会社は以下の対応を検討することになります。

回収不能時の対応
  • 退職金からの相殺:事前の合意があれば退職金から控除可能
  • 分割返済の交渉:退職後も任意での分割返済を求める
  • 貸倒損失として損金処理:回収の見込みがない場合、法人税法上の貸倒損失として損金算入が可能(税務上の要件を満たす必要あり)
  • 債権放棄:少額の場合は書面で債権放棄を通知し、損金処理する

立替金が高額になるリスクを避けるため、毎月の振込または受領委任払いを原則とし、立替は最終手段とすることが企業側のリスク管理として重要です。

休職中の社会保険料を払わないとどうなるか

「払えないから払わない」という選択は、将来的に大きなリスクをもたらします。

会社との関係悪化、立替金の請求、最悪の場合は給与差押えや社会保険の資格喪失につながる可能性もあります。リスクを正しく理解し、早めに対処しましょう。

会社との関係悪化と立替金の請求

社会保険料を払わないと、会社が立て替えることになり、会社との信頼関係が悪化します。

立て替えた分は後日請求され、退職時に退職金から相殺されたりします。最悪の場合は法的措置(訴訟)に発展することもあるので注意しましょう。就業規則に立替金返済の条項がある場合、退職金からの控除も可能です。

会社は従業員負担分も含めて社会保険料を納付する義務があるため、立替が発生すること自体は避けられません。しかし、事前の相談もなく支払いを放置すると、復職後の職場関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

最悪の場合は資格喪失や給与差押えも

社会保険料の滞納が続くと、会社全体の社会保険料滞納につながります。延滞金の発生、財産調査、最終的には差押えに至る可能性も。

社会保険料の滞納から約1ヶ月後に督促状が届き、それでも支払わないと財産調査・差押えに進みます。

延滞金は納付期限翌日から3ヶ月まで年2.4%、それ以降は年8.7%です(2025年時点)。

また、厚生労働省の通達(昭26.3.9保文発619号)では、長期休職で復職見込みがない場合、被保険者資格を喪失させることが認められています。

復職後の返済計画を早めに立てる

復職後に一括で返済するのは現実的に難しいため、休職中から返済計画を立てておくことが重要です。

休職が6ヶ月続くと、社会保険料だけで20〜30万円の未払いが発生することもあります。復職後の給与から全額控除すると生活が成り立たなくなります。

会社と相談し、給与や賞与からの分割控除など、無理のない返済方法を決めておきましょう。賃金からの控除には労使協定と本人同意が必要なため、事前に取り決めておくとスムーズです。

休職中の社会保険料以外に発生する税金・保険料

休職中は社会保険料だけでなく、他の税金や保険料についても把握しておく必要があります。「何が発生して、何が止まるのか」を整理しましょう。

雇用保険料(給与がなければ発生しない)

雇用保険料は実際に支払われた給与額に対して計算されるため、無給の休職中は発生しません。

雇用保険の被保険者資格自体は維持されるため、復職後に再度給与が発生すれば、通常通り雇用保険料が天引きされます。

なお、傷病手当金は「給与」ではないため、傷病手当金を受給していても雇用保険料はかかりません。

所得税(源泉徴収の有無)

所得税は給与が支払われたときに源泉徴収されるため、無給であれば所得税は発生しません

また、傷病手当金は非課税所得(所得税法第9条)のため、所得税の課税対象にはなりません。確定申告や年末調整の収入にも含める必要はありません。

ただし、休職前に受け取った給与に対しては所得税が発生しているため、年末調整や確定申告で過納付分の還付を受けられる可能性があります。

住民税(前年所得ベースで発生)

住民税は前年(1〜12月)の所得に基づいて翌年6月〜翌々年5月に課税されるため、今が無給であっても支払い義務が発生します。

休職中は給与天引き(特別徴収)ができなくなるため、以下のいずれかの方法で支払うことになります。

休職中の住民税の支払い方法
  • 普通徴収への切替:市区町村から届く納付書で自分で支払う
  • 会社による立替:社会保険料と一緒に会社が立て替え、復職後に精算
  • 傷病手当金からの支払い:受領委任払いの場合、住民税も差し引いてもらえることがある

住民税の滞納は延滞金の発生や差押えにつながるため、社会保険料と合わせて人事に確認しておきましょう。

休職中の社会保険料と年末調整・確定申告

休職中に支払った社会保険料は、年末調整や確定申告で「社会保険料控除」として所得から差し引くことができます。

特に休職中で収入が少ない場合、確定申告をすることで税金の還付を受けられる可能性があります。

年末調整での社会保険料控除の扱い

休職中でも在籍している場合、会社で年末調整が行われます。休職中に自分で支払った社会保険料は、社会保険料控除として計算に含められます。

無給の場合の源泉徴収票は、支払金額・源泉徴収税額は「0円」に。社会保険料のみが記載されます。摘要欄に「休職中につき無給」などと記載されることもあります。

なお、傷病手当金は非課税所得のため、年末調整・確定申告の収入には含めません。

確定申告が必要になるケース

年末まで在籍していれば会社で年末調整が行われますが、以下のケースでは確定申告が必要です。

確定申告が必要なケース
  • 年内に退職した場合(年末調整が行われない)
  • 医療費控除を受けたい場合
  • 生命保険料控除や住宅ローン控除を受けたい場合

休職中に多額の医療費を支払った場合、確定申告をすることで税金の還付を受けられる可能性があります。医療費控除は年末調整では適用できないため、確定申告が必要です。

休職中の社会保険料に関するよくある質問

最後に、休職中の社会保険料についてよく検索される疑問をQ&A形式でまとめました。

1.休職中の社会保険料はどうやって払うの?

主に3つの方法があります。①毎月会社に振り込む ②傷病手当金から支払う ③会社に立て替えてもらい復職後に返済する。

会社によって対応が異なるため、人事・総務部門に確認しましょう。

2.休職中の社会保険料はいくらくらいかかる?

月収30万円の場合で月額約4万円程度(健康保険料+厚生年金保険料の自己負担分)が目安です。40歳以上の方は介護保険料も加わるため、さらに高くなります。

3.休職中の社会保険料は免除されますか?

産休・育休中は届出により免除されますが、病気やケガ、うつ病などによる休職では免除されません。

傷病手当金を受給していても社会保険料は通常通り支払う必要があります。

4.休職中の社会保険料は全額自己負担ですか?

いいえ、通常通り労使折半です。従業員が支払うのは自己負担分(約半分)のみで、会社負担分を払う必要はありません。「休職中は全額自己負担」は誤解です。

5.休職中に社会保険料を払えない場合はどうすればいい?

まず会社に相談しましょう。分割払いや猶予に応じてもらえる場合があります。

また、傷病手当金を申請していない場合は早急に手続きしてください。

傷病手当金は給与の約2/3が最長1年6ヶ月支給されます。

6.休職中の社会保険料を払わないとどうなる?

会社が立て替えることになり、後日請求されます。退職時に退職金から相殺されたり、最悪の場合は法的措置に発展することもあります。

会社との信頼関係も悪化するため、早めに相談しましょう。

7.傷病手当金から社会保険料は引かれますか?

傷病手当金から自動的に差し引かれるわけではありません。ただし、会社が傷病手当金の受取先になっている場合(受領委任払い)は、社会保険料を差し引いた残額が本人に支給されます。

この方法を取るには本人の同意(委任状)が必要です。詳しくは「傷病手当金と社会保険料の関係」をご覧ください。

8.休職中の厚生年金はどうなりますか?

休職中も厚生年金の被保険者資格は維持され、保険料の支払いは継続します。加入期間は途切れず、休職前の標準報酬月額が将来の年金額に反映されるため、「払い損」にはなりません。

詳しくは「休職中の厚生年金はどうなる?」をご覧ください。

休職中の社会保険料についてまとめ

この記事のまとめ
  • 休職中でも社会保険料の支払い義務は継続する(免除は産休・育休のみ)
  • 傷病手当金(給与の約2/3)を申請し、保険料の支払い原資にする
  • 傷病手当金を受給していても社会保険料は免除されない
  • 厚生年金は休職中も加入が継続し、将来の年金額に反映される
  • 住民税は前年所得ベースで発生するため、無給でも請求が来る
  • 支払い方法(振込・手当金から差引・会社立替)は早めに人事に確認
  • 払えない場合は放置せず、会社に分割払いや猶予を相談する

休職して給与がゼロになっても、社会保険料の支払いは止まりません。まずは傷病手当金の申請を最優先し、支払い方法を人事と取り決めましょう。

払えない場合も放置せず早めに相談することが、安心して療養に専念するための第一歩です。

小川 実(おがわ・みのる)
このサイトの管理者

小川 実(おがわ・みのる)

成城大学経済学部経営学科卒業後、河合康夫税理士事務所勤務、インベストメント・バンク勤務を経て、
平成10年3月 税理士登録、個人事務所開業
平成14年4月 税理士法人HOP設立
平成18年3月 慶応大学補佐人講座受講
平成19年4月 成城大学非常勤講師
平成23年12月 一般社団法人相続診断協会 代表理事就任
令和2年11月 一般社団法人成長企業研究会 代表理事就任
令和5年11月 著書『小さな会社の「仕組み化」はなぜやりきれないのか』 出版
税理士・上級相続診断士・行政書士・終活カウンセラー2級。

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