社長の給料はどう決める?役員報酬の基本と最適な金額の考え方

更新日:2026年3月26日

社長の給料はどう決める?役員報酬の基本と最適な金額の考え方

会社を設立したら、社長の給料である「役員報酬」をどう決めるか悩む経営者は多いでしょう。

役員報酬は税金や社会保険料に大きく影響するため、適当に決めると損をしてしまうこともあります。

本記事では、役員報酬の基本的な仕組みから、相場・決め方・税金・社会保険料・変更手続きまでをわかりやすく解説します。

一人社長や合同会社の経営者、これから会社を設立する予定の方は、ぜひ参考にしてください。

この記事で分かること
  • 役員報酬の定義と従業員給与との違い
  • 役員報酬の相場(規模別・業種別の目安)
  • 役員報酬の決め方と実務手順
  • 役員報酬の税金と社会保険料の計算方法
  • 役員報酬はいくらが得か(最適な金額の考え方)

役員報酬とは?基本の仕組みをわかりやすく解説

役員報酬とは、会社の役員(取締役、監査役など)に対して支払われる報酬のことです。

従業員の給与とは異なり、税務上のルールが細かく定められており、適切に支払わないと会社の経費(損金)として認められない場合があります。

まずは役員報酬の基本的な仕組みを理解しましょう。

役員報酬の定義と「役員」の範囲

役員報酬とは、会社の役員に対して支払われる報酬のことです。
法人税法上の「役員」は、会社法上の役員よりも範囲が広い点に注意しましょう。

法人税法上の「役員」に該当する人
  • 取締役、執行役、会計参与、監査役
  • 理事、監事、清算人
  • 経営に従事している相談役・顧問
  • 同族会社で一定の株式を保有し経営に従事している使用人(みなし役員)

会社法上の役員には主に以下の種類があり、それぞれ役割が異なります。

役員の種類 主な役割
取締役 会社の業務執行・経営判断を行う。すべての株式会社に1名以上必要
監査役 取締役の業務執行を監査する。大会社や公開会社で設置義務あり
会計参与 取締役と共同で計算書類を作成する。税理士・公認会計士が就任
執行役 指名委員会等設置会社において業務を執行する。取締役会から権限委譲を受ける
会計監査人 計算書類の監査を行う。公認会計士または監査法人が就任

特に注意が必要なのは「みなし役員」です。

同族会社(株式の50%超を親族などで保有する会社)では、一定の持株要件を満たし経営に従事している使用人も税務上の役員として扱われます。

会社法上の役員ではない場合も、同様です。

みなし役員に該当すると、その人への給与は役員報酬として扱われます。
後述する定期同額給与などの要件を満たさないと損金不算入となるので注意が必要です。

役員報酬と従業員給与の7つの違い

役員報酬と従業員給与は、支払いのルールや税務上の取り扱いが大きく異なります。
主な違いは以下の7点です。

■役員報酬と従業員給与7つの違い
項目 役員報酬 従業員給与
損金算入 定期同額給与等の要件を満たす必要あり 全額損金算入可能
金額変更 原則として年1回(期首3ヶ月以内) 随時変更可能
割増賃金 支払い義務なし 支払い義務あり
最低賃金 適用なし 適用あり
日割り計算 原則不可(定期同額が崩れる) 可能
労働保険 加入対象外 加入対象
契約関係 委任契約 雇用契約

最も大きな違いは損金算入のルールです。
従業員給与は全額が会社の経費として認められます。

しかし、役員報酬は「定期同額給与」などの一定の要件を満たさないと経費として認められません。

また、役員は労働者ではなく会社と委任契約を結んでいるため、残業代や最低賃金、労働保険の対象外となります。

役員報酬は経費(損金)になる?損金算入の条件

「役員報酬は会社の経費として認められるのか?」という疑問を持つ経営者は多いでしょう。

結論として、一定の要件を満たせば役員報酬は法人税の計算上、損金(経費)に算入できます

ただし、従業員給与とは異なり、無条件に全額が経費になるわけではありません。損金に算入するためには、次の3つの支払い方法のいずれかに該当する必要があります。

損金算入が認められる3つの支払い方法
  • 定期同額給与:毎月同じ金額を支払う方法(最も一般的)
  • 事前確定届出給与:事前に届出をして支払う賞与(役員ボーナス)
  • 業績連動給与:利益に連動して支払う報酬(上場企業等が対象)

逆に、以下のようなケースでは損金不算入(経費として認められない)となります。

損金不算入になるケース
  • 期中に役員報酬の金額を変更した場合(定期同額給与の要件を満たさなくなる)
  • 事前確定届出給与の届出を期限内に行わなかった場合
  • 不相当に高額な役員報酬(同業・同規模の他社と比較して著しく高い場合)
  • 事実を隠ぺい・仮装して支給した場合

損金不算入になると、支払った役員報酬に対して法人税が課税されるうえ、受け取った役員個人にも所得税がかかるため、二重課税の状態になります。

役員報酬の支払い方法について、以下でさらに詳しく解説します。

役員報酬の3つの支払い方法(定期同額・事前確定届出・業績連動)

役員報酬を会社の経費(損金)として認めてもらうには、以下の3つの方法のいずれかで支払う必要があります。

■会社の経費として認めてもらうための3つの方法
支払い方法 概要 届出の要否
定期同額給与 毎月同じ金額を支払う方法。中小企業で最も一般的 届出不要
事前確定届出給与 あらかじめ届出た時期・金額を支払う方法。賞与のような支給に利用 税務署への届出が必要
業績連動給与 会社の利益に連動して支払う方法。有価証券報告書提出会社のみ利用可能 届出不要(上場企業向け)

中小企業では「定期同額給与」が最も一般的です。
毎月決まった金額を支払えばよく、税務署への届出も不要なため手続きが簡単で、多くの企業で利用されています。

役員に賞与(ボーナス)を支給したい場合は「事前確定届出給与」を利用します。

ただし、届出た金額と実際の支給額が1円でも異なると全額が損金不算入になるため、注意が必要です。

「業績連動給与」は有価証券報告書を提出している上場企業向けの制度であり、中小企業は実質的に利用できません。

役員報酬の相場はいくら?規模別・業種別の目安

役員報酬を決める際に気になるのが「他の会社はいくら払っているのか」という相場です。

国税庁の統計データをもとに、資本金規模別・従業員規模別の役員報酬相場を見ていきましょう。

資本金・売上規模別の役員報酬相場

国税庁「民間給与実態統計調査」では、役員を含む給与データが企業規模別に公表されています。

これらの統計データをもとに専門家が集計した資料では、役員報酬の平均年額は約800万円台とされています。

ただし、この数値は大企業を含めた平均であり、中小企業の相場はもっと低くなります。

統計結果を、表にまとめてみました。

■民間給与実態統計調査
資本金 役員報酬平均(年額) 月額換算
2,000万円未満 約634万円 約53万円
2,000万円以上5,000万円未満 約850万円 約71万円
5,000万円以上1億円未満 約1,000万円 約83万円
1億円以上10億円未満 約1,200万円 約100万円

資本金2,000万円未満の中小企業では、役員報酬が年間600万円以下の会社が約64%を占めています。
会社の規模に応じて、無理のない金額を設定することが重要です。

役職別の平均年間報酬(社長・専務・常務・取締役)

役員報酬の相場は、役職によっても大きく異なります

人事院「民間企業における役員報酬(給与)調査」等の公的統計データをもとに、役職別の平均年間報酬をまとめました。

■役職別の平均年間報酬(従業員500人以上の企業)
役職 平均年間報酬 月額換算
社長(代表取締役) 約4,600万円 約383万円
副社長 約2,900万円 約242万円
専務 約2,400万円 約200万円
常務 約1,900万円 約158万円
取締役(平取締役) 約1,400万円 約117万円

※出典:人事院「民間企業における役員報酬(給与)調査」をもとに編集部が整理。従業員500人以上の企業が対象。

上記は大企業の水準であり、中小企業ではこれより大幅に低くなります。

たとえば、従業員50人未満の中小企業では社長の平均年間報酬は約600〜800万円、取締役は約400〜500万円が目安です。

業種による傾向
  • 製造業・金融業:役員報酬が高い傾向(利益率が高く、企業規模も大きいため)
  • サービス業・小売業:相対的に低い傾向(労働集約型で利益率が低めのため)
  • IT・情報通信業:成長企業ではストックオプション等を含めると高額になるケースもある

自社の役員報酬を検討する際は、同業種・同規模の相場データと比較しながら設定するのが効果的です。

中小企業・一人社長の役員報酬の目安

中小企業の社長の役員報酬は、月額30万〜100万円が一般的な目安です。
一人社長や創業間もない会社の場合は、さらに低く設定するケースも多くあります。

中小企業・一人社長の役員報酬の目安
  • 創業初期・一人社長:月額30万〜50万円
  • 従業員10名以下の小規模企業:月額50万〜70万円
  • 従業員20名以上の中小企業:月額70万〜100万円

一人社長の場合、年収600万〜700万円(月額50万〜60万円)あたりが税負担と手取りのバランスが良いとされています。

この水準は、所得税の累進税率と法人税率の均衡点に近く、節税効果を得やすい金額帯です。

ただし、役員報酬の適正額は会社の利益状況や経営者の生活費によって異なります。
後述する税金・社会保険料のシミュレーションを行った上で決定しましょう。

役員報酬は売上の何パーセントが適正か

「役員報酬は売上の〇%」という決め方をする経営者もいますが、適正額は売上ではなく「利益」を基準に考えるべきです。

売上が大きくても利益が少なければ、高額な役員報酬を支払うことはできません。
一般的に、粗利益の10〜30%程度が役員報酬の目安とされますが、業種・利益率・経営状況によって大きく異なります。

役員報酬を決める際の注意点
  • 売上ではなく利益を基準に考える
  • 同業他社の役員報酬水準を参考にする
  • 高すぎると「不相当に高額」と判断され損金不算入になるリスクがある

役員報酬が「不相当に高額」と税務署に判断された場合、その部分は会社の経費として認められません。

同業種・同規模の会社と比較して明らかに高額な場合は、税務調査で指摘を受ける可能性があります。

役員報酬の決め方【実務手順とポイント】

役員報酬は自由に決められるわけではなく、法人税法で定められた期限やルールに従う必要があります。

「期首3ヶ月以内」の決定ルールを中心に、具体的な決め方と手続きを解説します。

役員報酬を決めるタイミングと期限(期首3ヶ月ルール)

役員報酬(定期同額給与)の決定・変更は、事業年度開始日から3ヶ月以内に行う必要があります
この期限を過ぎて変更した場合、変更分は会社の経費として認められません。

期首3ヶ月ルールの具体例
  • 3月決算の会社:4月〜6月末までに株主総会で決議
  • 12月決算の会社:1月〜3月末までに株主総会で決議
  • 新設法人:設立日から3ヶ月以内に決定

このルールは法人税法施行令第69条に規定されており、役員報酬の不当な利益操作を防ぐ目的があります。

期限を1日でも過ぎると、増額分・減額分の一部が損金算入できなくなるため、スケジュール管理が重要です。

役員報酬の決め方4ステップ

役員報酬は以下の4ステップで決定します。

STEP1:会社の利益を予測する

今期の売上・経費を見積もり、利益予測を立てます。役員報酬は利益から支払うため、正確な予測が重要です。

STEP2:税金・社会保険料をシミュレーションする

役員報酬の金額によって、法人税・所得税・社会保険料の負担が変わります。複数のパターンで試算し、最適な金額を検討します。

STEP3:株主総会で決議する

役員報酬の総額を株主総会で決議します。各役員への配分は取締役会(または代表取締役)に一任することが一般的です。

STEP4:議事録を作成・保管する

株主総会議事録を作成し、本店に10年間、支店に5年間保管します。
議事録は税務調査で確認されることがあるので注意が必要です。

特にSTEP2の税金・社会保険料のシミュレーションが重要です。
役員報酬を高くすると所得税・社会保険料が増え、低くすると法人税が増えます。

会社と個人のトータルで最も負担が少なくなる金額を見つけることがポイントです。

一人社長・合同会社の役員報酬の決め方

一人社長の株式会社や合同会社でも、役員報酬の決定手続きは必要です。
会社形態によって手続きが異なります

■役員報酬の決め方
会社形態 決定方法
一人社長の株式会社 自分一人で株主総会を開催し、議事録を作成。出席者は自分一人でも有効
合同会社 定款に定めるか、社員総会または総社員の同意で決定。同意書を作成・保管

合同会社には厳密な意味での「役員」は存在せず、出資者である「社員」が業務を執行し報酬を受け取ります。

業務執行社員の報酬を決める場合は、定款に定めるか、社員全員の同意が必要です。

一人社長の場合も、形式的に株主総会を開催して議事録を残すことが重要です。

議事録がないと、税務調査で役員報酬の決定過程を説明できず、損金算入を否認されるリスクがあります。

役員報酬の税金と社会保険料の仕組み

役員報酬を受け取ると、所得税・住民税・社会保険料が差し引かれます。

金額によって税金・社会保険料の負担が大きく変わるため、手取り額を把握しておくことが重要です。

役員報酬にかかる税金(所得税・住民税)

役員報酬は「給与所得」として課税され、所得税(5〜45%の累進課税)と住民税(約10%)がかかります。

■役員報酬にかかる税金
課税所得金額 所得税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超〜330万円以下 10% 97,500円
330万円超〜695万円以下 20% 427,500円
695万円超〜900万円以下 23% 636,000円
900万円超〜1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超〜4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

課税所得は、役員報酬から「給与所得控除」を差し引いた金額です。

給与所得控除は最低65万円から最大195万円まで自動的に適用されるため、役員報酬を設定すると一定の節税効果があります。

なお、基礎控除(58万円)と給与所得控除(65万円)を合わせると年収123万円以下は所得税が非課税になります。
住民税は、年収100万円前後から課税されます。

役員報酬と社会保険料の関係

役員報酬には健康保険料と厚生年金保険料がかかります。
会社と本人で折半(労使折半)して負担します。

社会保険料の仕組み
  • 健康保険料率:約9.85%(協会けんぽ東京支部・2026年度)→会社・本人各約4.9%
  • 厚生年金保険料率:18.3%(全国一律)→会社・本人各9.15%
  • 介護保険料:40歳以上は追加で約1.6%

社会保険料は「標準報酬月額」をもとに計算されます。
標準報酬月額には上限があり、健康保険は139万円(50等級)、厚生年金は65万円(32等級)が上限です。

役員報酬が月額65万円を超えると、厚生年金保険料はそれ以上増えません。
ただし、年金受給額も上限があるため、将来の年金が大きく増えるわけではない点に注意が必要です。

役員報酬の手取り早見表【金額別シミュレーション】

役員報酬の金額別に、税金・社会保険料を差し引いた手取り額の目安をまとめました(東京都・40歳未満・扶養なしの場合)。

■手取りの目安早見表
役員報酬(月額) 社会保険料 所得税・住民税 手取り(月額) 手取り率
30万円 約4.5万円 約1.5万円 約24万円 約80%
50万円 約7.4万円 約4.2万円 約38万円 約76%
70万円 約10万円 約7.5万円 約52万円 約75%
100万円 約14万円 約14万円 約72万円 約72%
150万円 約17万円 約28万円 約105万円 約70%
200万円 約17万円 約45万円 約138万円 約69%

※実際の金額は扶養人数や居住地、年齢により異なります。

役員報酬が高くなるほど、手取り率は下がっていきます。
月額30万円では約80%が手取りになりますが、月額200万円では約69%です。

手取りを最大化するだけでなく、会社に残す利益とのバランスを考えましょう。

役員報酬はいくらが得?最適な金額の考え方

「役員報酬はいくらに設定すれば最もお得なのか」は、多くの経営者が悩むポイントです。

法人税と所得税のバランスを考え、会社と個人のトータルで最も負担が少なくなる金額を見つけましょう。

法人税と所得税のバランスを考える

会社の利益が800万円以下なら役員報酬を高めに、800万円超なら法人に利益を残す方が有利になりやすい傾向があります。

これは、法人税の実効税率(中小企業で約23〜25%)と所得税の累進税率(5〜45%)の違いによるものです。

法人税と所得税の比較
  • 法人税の実効税率:所得800万円以下は約23%、800万円超は約34%
  • 所得税の税率:課税所得695万円超から23%、900万円超から33%
  • 役員報酬には社会保険料(約15%)も加算される

役員報酬には「給与所得控除」が適用されるため、単純に税率だけで比較はできません。

また、社会保険料は将来の年金受給にもつながります。
一概に、損とは言えないのです。

最適な金額は、会社の利益状況や経営者の生活費によって異なります。

税理士に相談して、シミュレーションしてみることが確実です。

役員報酬を高くする・低くするメリットとデメリット

役員報酬の設定には、高いか低いかでメリットとデメリットがあります。

■役員報酬を高くするメリット・デメリット
メリット デメリット
高く設定 ・法人税が減る
・給与所得控除が使える
・個人の手取りが増える
・所得税・住民税が増える
・社会保険料が増える
・「不相当に高額」と判断されるリスク
低く設定
(0円含む)
・所得税・社会保険料が減る
・会社に内部留保できる
・法人税が増える
・社会保険に加入できない(0円の場合)
・銀行融資の審査で不利

特に注意が必要なのは役員報酬を0円にした場合です。

社会保険に加入できないため、国民健康保険・国民年金に切り替える必要があります。
また、将来の厚生年金受給額が減り、銀行からの融資審査で不利になるかもしれません。

「不相当に高額」と税務署に判断された場合、その部分は損金不算入となります。

同業他社と比較して、適正な水準に設定することも重要です。

節税を意識した役員報酬の設定ポイント

節税を意識した役員報酬の設定には、3つのポイントがあります。

役員報酬を設定すると、最低65万円から最大195万円の給与所得控除が自動的に適用されます。

これは個人事業主にはない大きなメリットです。

厚生年金保険料は、月額65万円(年収780万円)で上限に達します。

これを超えると保険料は増えませんが、年金受給額も頭打ちになるため、保険料の面ではメリットがあると言えるでしょう。

役員報酬を抑えて法人に利益を残し、将来退職金として受け取る方法もあります。

退職金は「退職所得控除」が適用され、税負担が軽くなります。

短期的な節税だけでなく、退職金まで含めた長期的な視点で役員報酬を設計することで、トータルの税負担を最小化できます。

役員報酬の変更手続きと注意点

役員報酬は一度決めたら終わりではなく、会社の業績に応じて変更が必要になることもあります。

ただし、変更できるタイミングには制限があるため、ルールを理解しておくことが重要です。

役員報酬を変更できるタイミング

役員報酬(定期同額給与)の変更は、原則として事業年度開始から3ヶ月以内に限られます。

役員報酬を変更できるタイミング
  • 事業年度開始から3ヶ月以内(定時株主総会)
  • 臨時改定事由に該当する場合(期中でも可能)
  • 業績が著しく悪化した場合(減額のみ可能)

3ヶ月を過ぎて役員報酬を変更した場合、変更前と変更後で金額が異なる部分は損金算入できません。

例えば、月額50万円から70万円に増額した場合、差額の20万円×残りの月数が損金不算入となります。

変更自体は期中でも可能ですが、税務上のペナルティがあるため、原則として期首3ヶ月以内に決定することが重要です。

役員報酬変更の手続き(議事録・届出)

役員報酬を変更する際は、株主総会で決議し、議事録を作成・保管します。

役員報酬変更の手続き
  • 株主総会を開催し、役員報酬の変更を決議
  • 議事録を作成(日時・出席者・決議内容を記載)
  • 議事録を本店に10年間、支店に5年間保管
  • 社会保険の等級が2等級以上変わる場合は年金事務所へ届出

税務署への届出は、事前確定届出給与を除き原則不要。

ただし、社会保険の標準報酬月額が2等級以上変わる場合は、年金事務所への「月額変更届」の提出が必要です。

議事録は税務調査で確認されることがあるため、必ず作成・保管しておきましょう。

期中に役員報酬を変更できる例外ケース

「臨時改定事由」に該当する場合は、期中でも役員報酬の変更が認められます

期中変更が認められる臨時改定事由
  • 役員の地位変更(取締役→代表取締役への昇格など)
  • 役員の職務内容の重大な変更
  • 経営状況の著しい悪化(減額のみ)
  • 期中に新たに就任した役員への報酬支給

「経営状況の著しい悪化」とは、単に利益が減っただけでは認められません。

主要取引先の倒産、売上の激減、資金繰りの悪化など、客観的に証明できる事由が必要です。

期間中に新たに就任した役員については、就任後から毎月同額を支給すれば「定期同額給与」として認められます。

役員報酬の源泉徴収と年末調整

役員報酬を支払う際は、源泉所得税を天引きして税務署に納付する必要があります。

従業員給与と同様に、年末調整の対象にもなります。

役員報酬の源泉徴収の計算方法

役員報酬の源泉徴収税額は、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を使って計算します。

源泉徴収税額の計算手順
  • 役員報酬から社会保険料を差し引く
  • 差し引いた金額を源泉徴収税額表に当てはめる
  • 扶養控除等申告書の提出状況で「甲欄」「乙欄」を判定

扶養控除等申告書を提出していれば「甲欄」、未提出なら「乙欄」を適用します。

甲欄適用の場合、月額88,000円未満なら源泉徴収税額は0円です。

乙欄適用の場合は、少額でも「支給額×3.063%」の税金が発生し、税負担が重くなります。
役員であっても、必ず扶養控除等申告書を提出しましょう。

役員報酬の年末調整

役員報酬も従業員給与と同様に年末調整の対象となります。

一人社長の場合、年末調整は自分で行う(または税理士に依頼する)ことになります。12月に行う年末調整を忘れずに実施しましょう。

役員報酬で確定申告が必要なケース

役員報酬のみを1ヶ所から受け取っており、年収2,000万円以下であれば、確定申告は原則不要です(年末調整で完結します)。

ただし、以下のケースでは確定申告が必要です。

確定申告が必要なケース
  • 年収が2,000万円を超える場合
  • 2か所以上から給与を受けている場合
  • 給与以外の所得が20万円を超える場合
  • 医療費控除や住宅ローン控除(初年度)を受ける場合

年収2,000万円を超える役員は年末調整の対象外となるため、必ず確定申告が必要です。

また、複数の会社から役員報酬を受けている場合も、主たる勤務先以外の報酬は確定申告で合算します。

役員報酬に関するよくある質問

①役員報酬はいつまでに決めればいい?

A.事業年度開始から3ヶ月以内に決定する必要があります。

新設法人は設立日から3ヶ月以内です。
この期限を過ぎて決定・変更すると、その部分は損金算入できなくなります。

②役員報酬と給与は両方もらえる?

A.使用人兼務役員であれば、役員報酬と使用人給与の両方を受け取れます。

ただし、代表取締役・専務取締役・常務取締役などは使用人兼務役員になれないため、役員報酬のみとなります。

③役員報酬を0円にするとどうなる?

A.社会保険の被保険者資格を喪失し、国民健康保険・国民年金への切り替えが必要になります。

また、将来の年金受給額が減少し、銀行融資の審査でも不利になるため、特別な事情がない限り0円設定はおすすめしません。

④役員報酬は毎月変えられる?

A.原則として毎月同額でなければなりません(定期同額給与)。

毎月金額を変えると、損金算入できなくなります。
変更は原則として年1回、事業年度開始から3ヶ月以内に行います。

⑤役員報酬の最低額はいくら?

A.法律上の最低額はありません。0円でも可能です。

ただし、0円の場合は社会保険に加入できないなどのデメリットがあるため、最低でも月額10万円程度は設定することをおすすめします。

⑥一人社長でも役員報酬は必要?

A.法律上は必須ではありませんが、設定することをおすすめします。

役員報酬を設定すると給与所得控除が使えるため、個人事業主と比べて節税効果があります。
また、社会保険に加入でき、銀行融資の審査でも有利になります。

⑦合同会社の役員報酬の決め方は?

A.定款に定めるか、社員総会・総社員の同意で決定します。

議事録または同意書を作成し保管してください。
合同会社には「役員」という概念はなく、業務執行社員の報酬として扱われます。

⑧役員報酬に残業代は含まれる?

A.役員は労働者ではないため、残業代(割増賃金)の支払い義務はありません。

役員は会社と委任契約を結んでおり、労働基準法の適用外となります。
どれだけ働いても、役員報酬以外の追加報酬を請求することはできません。

⑨役員報酬は経費になる?

A.定期同額給与等の要件を満たせば、全額が会社の経費(損金)になります。

要件を満たさない場合は損金不算入となり、法人税の負担が増えます。
中小企業では毎月同額を支払う「定期同額給与」が一般的です。

⑩役員報酬の増額はいつできる?

A.原則として事業年度開始から3ヶ月以内です。

役員の地位変更(昇格など)や職務内容の重大な変更など「臨時改定事由」に該当する場合は、期中でも増額が認められます。

⑪役員報酬の社会保険料はいくらかかる?

A.役員報酬の約15%が社会保険料(健康保険+厚生年金)として本人負担になります(会社負担分を含めると約30%)。

たとえば月額50万円の場合、本人負担は約7.4万円、会社負担も同額の約7.4万円で、合計約14.8万円が社会保険料となります。

なお、厚生年金保険料には上限があり、標準報酬月額65万円(月額63.5万円以上)を超えると保険料は頭打ちになります。そのため、報酬が高額になるほど社会保険料の負担割合は下がる傾向があります。

⑫役員報酬の節税方法にはどんなものがある?

A.主な節税方法として、以下の4つがあります。

役員報酬に関する主な節税方法
  • 法人税との均衡点を意識した金額設定(法人税率と所得税率が逆転するラインを見極める)
  • 事前確定届出給与(役員賞与)の活用(社会保険料の上限を活用した節税)
  • 退職金制度の併用(退職所得控除で大きな節税効果が得られる)
  • 小規模企業共済への加入(掛金が全額所得控除の対象)

ただし、節税だけを目的に報酬を極端に設定すると、税務調査で否認されるリスクがあります。税理士と相談のうえ、適正な範囲で設定しましょう。

小川 実(おがわ・みのる)
このサイトの管理者

小川 実(おがわ・みのる)

成城大学経済学部経営学科卒業後、河合康夫税理士事務所勤務、インベストメント・バンク勤務を経て、
平成10年3月 税理士登録、個人事務所開業
平成14年4月 税理士法人HOP設立
平成18年3月 慶応大学補佐人講座受講
平成19年4月 成城大学非常勤講師
平成23年12月 一般社団法人相続診断協会 代表理事就任
令和2年11月 一般社団法人成長企業研究会 代表理事就任
令和5年11月 著書『小さな会社の「仕組み化」はなぜやりきれないのか』 出版
税理士・上級相続診断士・行政書士・終活カウンセラー2級。

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