令和7年も12月に入りました。
来年度の税制改正の大枠を示す「税制改正大綱」の内容が話題になり、
今回は不動産の相続税評価を見直す動きが注目を集めています。
さて、来年は防衛力強化に係る財源確保のための税制措置(防衛強化税制)が施行されます。
この改正は日本の防衛予算をGDP比2%に引き上げるという政府の計画の根幹を担うこととなります。
防衛強化税制は、以下の3つの制度が想定されています。
(1)法人税の付加税
(2)所得税の復興特別所得税からの組み換え
(3)たばこ税の見直し
来年から、上記(1)と(3)が施行されますが、この改正で、毎年約1兆円の税収を見込んでいるということです。
クライアント各位には、防衛特別法人税についての案内を開始しています。
令和8年4月1日以降開始の事業年度から、基準法人税額から基礎控除額500万円を控除した残額に4%を乗じた金額が防衛特別法人税額となります。法人税率*4%ですから、約1%の税負担です。
法人税を負担する企業等が課税の対象になりますが、500万円の基礎控除があることから、中小企業であれば、年間課税所得が2,400万円程度であれば、防衛特別法人税は生じません。このように中小企業への影響は限定的ですが、増加する防衛予算を自社の利益が担うというイメージを持たれると、例年の制度改正とは異なる緊張感があるかと思います。
税制は国家のあり方を映す鏡です。税制改正に関心を持つとともに、国の進む方向にも強い関心をもって日々を過ごしたいです。
第二次世界大戦前の税務行政の話ですが、当時の税収の主役は酒税でした。
酒の密造が盛んに行われ、その取り締まりが大きな課題だったそうです。
ある税務署長が、ある村の濁り酒の密造を疑い、それを摘発するために奮闘する物語を、かの宮沢賢治が『税務署長の冒険』という短編に残しています。
今では考えられないのですが、税務署長が変装をして探偵のような行動をします。ようやく密造現場を突き止め、そこで悪事を働く村の住人たちと対峙するシーンが印象的です。
「『さあ、おれを殺すなら殺せ、官吏が公務のために倒れることはもう当然だ。』署長は大へんいゝ気持がした。」
このような件です。収税官としての職務に生き、その正義を全うしようとする潔さを感じますし、税務署長もそのように生きることに誇りを持っていることが伝わってきます。
国家の運営のために必要な費用を国民が負担することは当然です。そして、これを適正に徴収する税務関係の職員の職務遂行の上に、行政があります。
適切な税金の活用を期待します。
(文責 星川望)