生前、義母が負担してくれた治療費について追徴課税を求められています。
数年前にご相談者(60代男性)が大病を患ったときに、当時同居していた義母が治療費の全額を負担してくれていました。その後、義母が他界し、相続税の申告をしたところ、税務調査により、義母が負担した医療費相当は生前贈与であるとして、税務署から修正申告を求められているそうです。
生前、義母が負担してくれた治療費について追徴課税を求められています。
数年前にご相談者(60代男性)が大病を患ったときに、当時同居していた義母が治療費の全額を負担してくれていました。その後、義母が他界し、相続税の申告をしたところ、税務調査により、義母が負担した医療費相当は生前贈与であるとして、税務署から修正申告を求められているそうです。
税務署の見解としては、ご相談者は既に定年退職しているとはいえ、医療費を自己で負担するのに十分な経済力を有しており、これを義母が負担する理由はないため、これは贈与税の課税対象となる贈与に該当するとのことでした。
相続税法第21条の3(贈与税の非課税財産)において、扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものは贈与税の課税価格に算入しないと定められています。
義母から見てご相談者は、三親等内の親族で生計を一にする者に当たるため、前述の「扶養義務者」に該当します。
扶養義務者の意義(相続税法基本通達1の2-1)
相続税法第1条の2第1号に規定する「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法第877条(扶養義務者)の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。
また、ご相談者自身に経済的な蓄えがあったとはいえ、当時の段階では、完治までにこの先どのくらいの治療費がかかるのかわからず、それを義母であったとしても面倒を看ることは家族としては当然の行動であり、こうした事情を勘案して判断するよう、税務署と半年間にわたり交渉しました。
生活費等で通常必要と認められるもの(相続税法基本通達21の3-6)
相続税法第21条の3第1項第2号に規定する「通常必要と認められるもの」は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいうものとする。
結果的に、税務署から、相続税法で定める「贈与税の非課税財産に当たる」という回答をもらい、追徴課税を回避することができました。
相続税の税務調査では、被相続人の生前の出金が問題視されるケースが多いです。納税者との認識と異なる取り扱いをされないためにも、事前にきちんと準備しておくことが重要です。
HOPグループでは、税務調査を想定し、申告書の作成段階で、過去の預金の推移の確認も行っております。
(文責:髙橋 大祐)