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更新日:2026年08月25日
「今の社労士を変えたい。でも、引き継ぎが大変そうで踏み出せない」
社労士の変更をご相談いただくとき、最後にブレーキをかけているのはたいてい料金でもサービス内容でもなく、この「引き継ぎ」への不安です。
私たちは社会保険労務士法人として、他の事務所から顧問先を引き継ぐ側の立場で、この移行を何度も経験してきました。その経験から先にお伝えすると、引き継ぎでつまずく会社と、何事もなく移行できる会社の差は、準備した資料の量ではなく「順番」と「時期」の選び方にあります。
この記事では、社労士の引き継ぎで実際に何が起きるのか、会社側は何をすればよいのか、そして私たち受け入れる側が何を巻き取れるのかを、実務の目線で整理します。
目次
社労士の変更をためらう理由は、大きく2つに分かれます。
ひとつは人間関係です。「角を立てたくない」「引き継ぎで非協力的な態度をとられたら困る」という気まずさ。長くお世話になっている先生であれば恩義もあり、切り出すには勇気が要ります。
もうひとつは、業務が止まる恐怖です。「今の先生しか知らない過去の経緯」がブラックボックス化していて、移行の途中で給与計算や社会保険の手続きが止まってしまうのではないか、という不安。この2つが重なって、多くの会社が「不満はあるが、そのまま」を選んでいます。
ただ、私たちが現場で見てきた限り、待つことのリスクのほうが大きいというのが率直な見解です。
よくあるのが「年末調整が終わってから」「4月の入退社が落ち着いてから」と、キリの良い時期まで待つという判断です。気持ちはよく分かりますが、我慢している間に労務トラブルが起きると、初動を誤って致命傷になりかねません。問題社員への対応や労基署への対応は、最初の1週間の動き方で結果が変わります。「変えたい」と思った時点で動き始めるのが、実は一番安全なタイミングです。
なお、社労士の高齢化や経営環境の変化を理由に、閉業する事務所や担当者の交代を余儀なくされる企業は年々増えています。「まだ大丈夫」と思っていた会社が、ある日突然、選択の余地なく引き継ぎに直面するケースも珍しくありません。
引き継ぎは、3ヶ月前から動き始めれば十分に間に合います。全体の流れは次のとおりです。
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|---|---|---|
| 時期 | やること | ポイント |
| 3ヶ月前 | 現契約の確認と、課題の整理 | 契約書の解約予告期間を確認。今の不満と、新しい社労士に期待することを書き出す |
| 2ヶ月前 | 新しい社労士の選定・面談 | 複数の事務所に相談し、引き継ぎをどこまで手伝ってくれるかを必ず確認する |
| 1ヶ月前 | 前任の社労士へ解約の連絡、引き継ぎ開始 | 電話で一報を入れてから書面。同時に資料・データの回収を始める |
| 切替当月 | 並走期間のスタート | 給与計算がある場合は新旧で同時に計算し、結果を突き合わせる |
| 翌月以降 | 新体制で本格稼働 | 初月は月1回の打ち合わせを設定し、運用のズレを早めに潰す |
順番として絶対に守っていただきたいのが、「新しい社労士を決めてから、前任の社労士に解約を伝える」という一点です。先に解約を伝えてしまうと、次が決まるまでの空白期間に入退社や労災が発生したときに動ける人がいなくなります。
「今の先生から返してもらった書類を整理してから、次の依頼をしよう」――これが一番の罠です。整理を待っている間に時間だけが過ぎていきます。
事前に確認していただきたいのは、次の3点だけです。
顧問契約には、解約の意思をいつまでに伝える必要があるかが定められていることがあります。この期限を過ぎると自動更新に入ってしまうこともあるため、まず契約書を開いて、解約予告期間の定めがあるかどうかを確認してください。
見落とされがちですが、移行で最もつまずくのがここです。給与計算ソフトの管理者アカウントを前任の事務所が握っていて、自社ではログインできない。電子申請(e-Gov)の届出をすべて代行してもらっていたため、自社に情報が残っていない。こうした状態だと、契約が切れた瞬間に過去データへアクセスできなくなります。自社でログインできるのかどうかを、解約を伝える前に確認してください。
産前産後休業・育児休業、労災の申請、助成金の申請など、途中まで進んでいる手続きがあるかどうか。これらは前任の社労士に完了まで対応してもらうのか、途中で引き継ぐのかを決める必要があります。
逆に言えば、この3点以外の準備は不要です。引き継ぎの段取りや不足書類の洗い出しは、受け入れる側の社労士が伴走します。
引き継ぎには、正直なところ相当な量の資料提供が必要になります。ただし、これを会社側がゼロから揃える必要はありません。「今あるものをそのまま出す」で構いません。
紙とデータ(PDF・Excel・CSV)の両方でもらえるのが理想です。特に就業規則や規程類は、WordやExcelの編集可能なデータがあると、改定のたびに作り直す手間がなくなります。
きれいに整理されている必要はありません。前任の社労士が作成した独自のExcelや、手書きのメモが残っている状態でも、そのままお見せいただければ私たちのほうで整理します。むしろ「整えてから渡そう」とすると、いつまでも移行が始まりません。
引き継ぎのご相談でよくいただく質問が、これです。「引き継ぎの確認事項を、新しい社労士から今の社労士へ直接聞いてもらえないか」。
正直にお答えすると、私たちと前任の事務所との間には契約関係がないため、直接のやり取りは控えています。守秘義務の観点からも、間に会社が入らないまま個人情報や契約内容をやり取りするのは適切ではありません。
ただし、会社側の負担を減らす方法はあります。会社・前任の社労士・私たちの3社が合同でオンラインミーティングを設定し、その場で引き継ぎの範囲を一度に擦り合わせるというやり方です。何をどこまで前任の社労士が対応し、どこから私たちが引き取るのか。この線引きさえその場で決まれば、あとは資料の受け渡しだけになります。
会社の担当者が両者の間を何度も往復して伝言する、という一番つらいパターンを避けられるので、可能な場合はこの形をおすすめしています。
引き継ぎのとき、私たちは必ず「これまで何を委託してきたか」を丁寧にヒアリングします。そして、そのまま継続できることと、できないこと・やり方が変わることを洗い出します。
この作業をすると、かなりの確率で「実は誰も必要としていなかった月次の帳票」や「前任の先生の独自ルールで運用されていた手当」が出てきます。長年続いていると社内でも疑問に思わなくなっているのですが、引き継ぎのタイミングは、こうした業務を見直せる数少ない機会です。
引き継ぎを「面倒な作業」ではなく「業務そのものを整理する機会」と捉えていただけると、移行後の運用がかなり軽くなります。
給与計算を委託している場合、切り替えのリスクヘッジとして、1〜2ヶ月は前任の社労士と新任の社労士の双方が同じ月の給与計算を行い、結果が一致するかを確認する期間を設けることをおすすめしています。
給与計算は、就業規則や過去の運用慣行が積み重なった、その会社固有のロジックで動いています。仕様書に書かれていない暗黙のルール(店舗間のヘルプ手当、特定部署だけの深夜割増の扱いなど)は、実際に計算してみて数字がズレて初めて見つかります。
並走期間で拾えていれば、社内で確認して直せば済む話です。切り替え後に本番で発覚すると、従業員への説明と再計算、場合によっては差額の追加支給が発生します。給与の支給額に不足が生じれば、結果として労働基準法の全額払いの原則に反する状態になり得るため、単なる事務ミスでは済まなくなります。
「1ヶ月余分にコストがかかる」と敬遠されることもありますが、事故が起きたときの説明コストに比べれば、はるかに安い保険です。
給与計算を委託している場合は、年始(1月分の給与)からの切り替えが最もスムーズです。年間のデータが切り替わるタイミングなので、年の途中で分断されません。期中に切り替える場合は、前述の並走期間を長めに取ってください。
避けたいのは、社労士側の繁忙期です。あまり知られていませんが、社会保険労務士には季節的な繁忙期があります。4月は入退社手続きが集中し、6月から7月10日にかけては労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届が重なります。この時期は前任の社労士・新任の社労士のどちらも手が塞がるため、引き継ぎの質が落ちやすくなります。
助成金を申請中の場合は、原則としてその申請が完了してからの切り替えです。申請の途中で担当が変わると、要件の確認や添付書類の引き継ぎが煩雑になり、不支給のリスクが上がります。
ただし、冒頭で述べたとおり、これらは「動き始める時期」ではなく「切り替える月」の話です。相談や選定は今日から始めて構いません。むしろ3ヶ月前から動くには、今動く必要があります。
① 資料を回収する前に契約を終わらせてしまう 契約終了後は、前任の事務所に問い合わせる筋合いがなくなります。解約の連絡と同時に資料回収を始めてください。
② 解約予告期間を見落とし、1年自動更新されてしまう 契約書の確認は、新しい社労士を探し始めるより前でも構いません。
③ 自社で引き継ぎを完結させようとして、途中で頓挫する コスト削減のために引き継ぎを内製化しようとして止まってしまうケースをよく見ます。移行作業は本業ではないので、専任者を置けない限り必ず後回しになります。
④ 価格だけで乗り換え先を決める 「安さで選んで、また一人事務所でレスが遅い」という同じ悩みを繰り返す会社が実際にあります。今困っていることが、その事務所で解決するのかを確認してください。
⑤ 前任の社労士への不満をそのままぶつけてしまう 感情的なやり取りになると、資料の返却が遅れる、データが不完全な状態で渡されるといった形で跳ね返ってきます。
電話で一報を入れてから、書面またはメールで正式に通知する。この2段階が最もトラブルになりにくい進め方です。
理由は簡潔に、前向きな表現で構いません。「社内体制の見直しに伴い」で十分です。これまでの対応への不満を並べても、引き継ぎがスムーズになることはありません。
いつも大変お世話になっております。株式会社○○の○○です。
このたび、弊社の社内体制の見直しに伴いまして、○年○月○日をもって貴事務所との顧問契約を終了させていただきたく、ご連絡申し上げます。
これまで多大なるご尽力をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。つきましては、お預かりいただいている書類およびデータのご返却について、別途ご相談させていただければ幸いです。
引き続きのご協力を賜れますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
無事に移行できても、「結局また人事担当者に問い合わせが集中するのでは」という懸念は残ります。
私たちの場合、入退社の対象となる従業員ご本人から直接必要情報をヒアリングする体制を用意しています。基本的な必要事項は専用のWEBフォームに入力していただき、入力途中で分からないことがあれば、従業員ご本人が直接電話で相談できる窓口も設けています。
人事労務のご担当者を経由しないため、入退社が多い会社でも手続きが詰まりません。加えて、社会保険の加入・脱退や給付の手続きは従業員にとって馴染みが薄く、疑問を抱えたままになりがちな領域です。ここに専門家が直接答えることで、従業員側の安心感にもつながっています。
また、私たちは複数名のチームで分担して対応しているため、担当者の不在や退職で業務が止まることがありません。「今の先生が倒れたら給与が止まる」という属人化のリスクを解消するために乗り換えたのに、移行先でも同じ構造だった――ということにはなりません。
給与計算を含む場合は、並走期間を含めて1〜2ヶ月をみていただくのが目安です。相談開始から本格稼働までの全体では3ヶ月程度です。給与計算を委託しておらず、進行中の案件もなければ、より短く済みます。
引き継ぎを円滑に進めるという目的においては、伝える必要はありません。ただし、新しい社労士候補には具体的に伝えてください。それが解決できる相手かどうかの判断材料になります。
そのままお持ちください。整理をお待ちいただく必要はありません。実務の整理は私たちが伴走して行います。お願いしたいのは、社内で窓口となる担当者を1名決めていただくことだけです。
私たちは社会保険労務士法人・税理士法人・行政書士法人を併設する士業グループです。労務と税務の双方に関わる年末調整や住民税、退職金の計算といった業務を、窓口を分けずに一括してお引き受けできます。
引き継ぎの段取りから移行後の体制構築まで、まずは現状をそのままお聞かせください。
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