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更新日:2026年2月10日
平均賃金という言葉を聞いたことがある人はいるでしょう。しかし、正確な意味や計算方法を理解している人は少ないのではないでしょうか。
平均賃金は労働基準法で定められた法律用語。解雇予告手当や休業手当などを計算する際の基準となる重要な概念です。
本記事では、平均賃金の定義から計算方法、最低保証額、端数処理のルール、通勤手当の扱いまで、厚生労働省の基準に基づいてわかりやすく解説します。
労災申請を控えている方や、解雇・休業に関する手当の計算が必要な方は、ぜひ参考にしてください。
目次
平均賃金は、日常会話で使われる「平均的な給与水準」とは異なります。労働基準法第12条で定められた法律上の専門用語です。
解雇予告手当や休業手当、労災補償など、労働者の権利を守るための重要な基準として使用されます。
平均賃金とは、労働基準法第12条で定められた賃金の算定方法のこと。
算定事由発生日以前3ヶ月間の賃金総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額を指します。
重要なポイントは、計算の分母が「労働日数」ではなく「暦日数(総日数)」である点です。休日も含めた日数で計算するため、一般的な給与計算とは異なります。
〈平均賃金の計算式(原則)〉平均賃金 = 算定事由発生日以前3ヶ月間の賃金総額 ÷ その期間の総日数(暦日数)
平均賃金は、労働者の生活を保障するためのもの。そのため、通常の生活賃金をありのままに算定しています。
平均賃金は、解雇予告手当(30日分以上)、休業手当(60%以上)、年次有給休暇の賃金、災害補償、減給制裁の制限額など。労働者保護に関わる様々な場面で基準として使用されます。
| 使用場面 | 根拠条文 | 支給額の基準 |
|---|---|---|
| 解雇予告手当 | 労働基準法第20条 | 平均賃金の30日分以上 |
| 休業手当 | 労働基準法第26条 | 平均賃金の60%以上 |
| 年次有給休暇の賃金 | 労働基準法第39条 | 平均賃金(選択制) |
| 休業補償 | 労働基準法第76条 | 平均賃金の60% |
| 障害補償 | 労働基準法第77条 | 平均賃金の〇日分(障害等級による) |
| 減給制裁の制限 | 労働基準法第91条 | 1回につき平均賃金の半日分まで |
平均賃金が使われるのは労働者の生活を守るため、最低限の基準を設けるためです。
給付基礎日額は原則として平均賃金と同額。しかし、労災保険では被災労働者を適正に補償するための補正措置が適用されます。
具体的には、最低保障額(自動変更対象額)、スライド制、年齢階層別限度額などがあります。
労災保険法第8条第1項で「給付基礎日額は平均賃金に相当する額」と規定。しかし、長期療養者や若年・高齢労働者への配慮として追加で補正措置が設けられています。
平均賃金の計算には、基本の計算式と最低保証額、2種類の計算式があります。両方を計算して高い方が採用されます。
ここでは、計算式の詳細と端数処理のルールについて見ていきましょう。
平均賃金の基本計算式は「算定事由発生日以前3ヶ月間の賃金総額÷その期間の総日数(暦日数)」。
分母が「労働日数」ではなく「暦日数」なのがポイントです。また、賃金締切日がある場合は、直前の締切日から起算します。
〈基本の計算式〉:平均賃金 = 3ヶ月間の賃金総額 ÷ 3ヶ月間の暦日数
例:賃金総額90万円 ÷ 暦日数91日 = 9,890円10銭
賃金締切日当日に算定事由が発生した場合はその日を含めず、その前の締切日から起算するので注意が必要です。
日給制・時給制・出来高払いの労働者には、最低保証額が適用されます。計算式は「賃金総額÷労働日数×60%」です。
パートタイマーなど労働日数が少ない労働者は、暦日数で割ると平均賃金が著しく低くなりますよね。そのため、最低保証額が設けられています。
<最低保証額の計算式>:最低保証額 = 3ヶ月間の賃金総額 ÷ 3ヶ月間の労働日数 × 60%例:賃金総額41万円 ÷ 労働日数41日 × 60% = 6,000円
原則の計算と最低保証額を比較し、高い方を平均賃金として採用します。パートやアルバイトは最低保証額が適用されることが多いです。
平均賃金の計算で端数が生じた場合、「銭未満(小数第3位以下)を切り捨て」が原則。
つまり、小数点以下第2位までは残します。1銭=0.01円なので、例えば9,890.123円なら9,890円12銭(9,890.12円)となります。
実際に手当を支払う際は「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第3条」に基づき、1円未満を四捨五入します。
平均賃金の計算では、どの賃金を含めるか、どの期間を除外するかが重要。
通勤手当は「含む」のがポイントです。
通勤手当・残業代(時間外手当)は平均賃金の計算に含みます。
労働基準法第11条で「賃金」と定義されるすべてのものが対象。
基本給・各種手当・未払い賃金が含まれています。
| 区分 | 含むもの | 含まないもの |
|---|---|---|
| 基本給 | 月給、日給、時給 | - |
| 手当 | 通勤手当、時間外手当、家族手当、役職手当、住宅手当 | - |
| 賞与 | - | 年2回の賞与(3ヶ月超の期間ごとに支払われるもの) |
| 臨時的支払 | - | 結婚手当、見舞金、退職金 |
| その他 | 未払い賃金 | 出張旅費(実費弁償) |
通勤手当は労働基準法第11条の「賃金」に該当するため、平均賃金の計算に算入されます。ただし、出張旅費など実費弁償の交通費は「含まない」点に注意してください。
賞与・ボーナスは平均賃金の計算に「含まない」のがルールです。
労働基準法第12条第4項で「3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」は除外すると規定されています。よって、年2回のボーナスは除外されます。
ただし 3ヶ月ごとに支払われる賞与は例外となるので気を付けましょう。
平均賃金の算定期間から除外される期間は、下記の5つです。
傷病による欠勤は除外期間に該当しません。
| 除外される期間 | 根拠 |
|---|---|
| 業務上負傷・疾病による療養のための休業期間 | 労働基準法第12条第3項第1号 |
| 産前産後休業期間 | 労働基準法第12条第3項第2号 |
| 使用者の責めに帰すべき事由による休業期間 | 労働基準法第12条第3項第3号 |
| 育児休業・介護休業期間 | 労働基準法第12条第3項第4号 |
| 試用期間 | 労働基準法第12条第3項第5号 |
上記期間を除外しないと平均賃金が不当に低くなり、労働者にとって不利益となるため、除外規定が設けられています。除外期間中の賃金も算定から除外される点に注意してください。
ここでは、月給制、時給制・パート、入社3ヶ月未満のケース別に具体的な計算例を紹介します。
自分のケースに当てはめて計算してみてください。
月給30万円(通勤手当1万円含む)の労働者の場 合、直近3ヶ月の賃金総額93万円÷総日数91日=10,219円78銭が平均賃金となります。
| 項目 | 内容 | 詳細・計算式 |
|---|---|---|
| 対象期間 | 4月・5月・6月 | 暦日数:92日(31+31+30) |
| 月給内訳 | 300,000円 | 基本給29万円 + 通勤手当1万円 |
| 賃金総額 | 3ヶ月分合計 | 300,000円 × 3ヶ月 = 900,000円 |
| 平均賃金 | 1日あたりの額 | 900,000円 ÷ 92日 = 9,782円60銭 |
暦日数を使用するため、月によって平均賃金は変動します。
通勤手当を含めることを忘れずに計算してください。
時給制のパート労働者は原則計算と最低保障額計算の両方を計算し、高い方を平均賃金とします。
労働日数が少ないパートは最低保障額が採用されることが多いです。
| 項目 | 内容・計算式 | 金額/数値 |
|---|---|---|
| 基礎データ | 時給 / 勤務形態 / 賃金総額 / 暦日数 / 労働日数 | 1,200円 / 週3・1日6時間 / 345,600円 / 91日 / 39日 |
| ① 原則計算 | 賃金総額 ÷ 暦日数 | 3,798円90銭 |
| ② 最低保障 | (賃金総額 ÷ 労働日数) × 60% | 5,316円92銭 |
| 採用金額 | ①と②のいずれか高い方 | 5,316円92銭 |
入社3ヶ月未満の場合は「入社日から算定事由発生日までの賃金総額÷その期間の暦日数」で計算します。
賃金締切日がある場合、少なくとも1回分の完全な賃金締切期間があれば、締切日から起算です。
| 項目 | 内容 | 詳細・計算式 |
|---|---|---|
| 基本情報 | 入社日 / 算定事由発生日 | 1月20日 / 3月20日(解雇予告) |
| 賃金締切日 | 毎月末日 | 締切日があるため、既往の期間で計算 |
| 算定対象期間 | 入社日 〜 直近の締切日 | 1月20日 〜 2月28日 |
| 算定対象日数 | 暦日数 | 12日(1月) + 28日(2月) = 40日 |
| 賃金総額 | 期間中の合計額 | 120,000円 + 250,000円 = 370,000円 |
| 平均賃金 | 1日あたりの額 | 370,000円 ÷ 40日 = 9,250円 |
入社後の期間とその期間中の賃金総額で算定する点がポイントです。
労災申請時には、休業補償給付支給請求書(様式第8号)と平均賃金算定内訳(別紙1)の提出が必要です。
ここでは、記入項目と具体的な記入例を解説します。
様式第8号(休業補償給付支給請求書)と平均賃金算定内訳(別紙1)は、厚生労働省のホームページからPDF・Excel形式でダウンロードできます。
別紙1は初回の休業補償請求時のみ添付が必要で、2回目以降は不要です。
記載内容が本体(様式第8号)の記載と矛盾していないか確認することが重要。厚生労働省の公式サイトから様式をダウンロード可能です。
欠勤控除がある場合、控除後の賃金総額(実際に支払われた賃金)を使用して計算します。
ただし、欠勤日数は暦日数から控除しません。傷病による欠勤は除外期間に該当しないため、通常通り計算します。
欠勤が多い期間を算定期間とすると、平均賃金が低くなる点に注意が必要です。
平均賃金についてのよくある疑問をQ&A形式でまとめました。実務で迷いやすいポイントなので、最後までお読みください。
平均賃金は労働基準法第12条で定められた計算式(3ヶ月の賃金総額÷暦日数)で算出される法律用語です。通常賃金は所定労働時間労働した場合に支払われる賃金を指します。
有給休暇の賃金計算では、(1)平均賃金、(2)通常の賃金、(3)標準報酬日額の3つから選択。就業規則で定めた方法で統一して支払います。
含まれます。通勤手当は労働基準法第11条の「賃金」に該当するため、平均賃金の計算に算入します。
ただし、割増賃金(残業代)の計算では除外される点に注意してください。平均賃金と割増賃金では通勤手当の扱いが異なります。
含まれます。時間外手当、休日手当、深夜手当など、算定期間中に支払われた残業代はすべて賃金総額に算入します。
残業代は労働の対償として支払われる賃金であるため、平均賃金の計算から除外されません。
含まれません。3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は除外されます(労働基準法第12条第4項)。
年2回の賞与は「3ヶ月を超える期間ごと」に該当するため除外。ただし、年4回支給される賞与は除外されず算入されます。
原則計算(賃金総額÷暦日数)と最低保障額(賃金総額÷労働日数×60%)の両方を計算し、高い方を採用します。
労働日数が少ない場合は最低保障額が適用されることが多いです。パートやアルバイトは最低保障額の計算も必ず行ってください。
可能です。労働基準法第39条第9項で、(1)平均賃金、(2)通常の賃金、(3)標準報酬日額の3つから選択できます。
就業規則で定めた方法で統一して支払う必要があり、従業員ごとに異なる計算方法を適用することはできません。
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