相続時精算課税制度を活用し、株式の承継を行った事例

ご相談内容

A社は、今から30年前に、それまで甲が個人で行っていた不動産賃貸事業を法人成りした際に設立した法人です。ここ数年はコロナ禍による空室や値下げ交渉が相次いだことで、業績が低迷し、5年前には1株60万円だった自社の株価も2/3まで下がってしまいました。
このたび、甲が65歳を迎え、A社を甲の子(40歳)に承継することにしました。

【A社】
資本金:300万円
株主:甲60株(100%保有)
株価(直近):1株40万円

 

現状分析と改善策

解決策

A社の株式を甲から子へ移転する方法は、大きく3つです。

① 相続
② 譲渡(子による買い取り)
③ 贈与

株式を取得する子の資金的な負担を考えた場合に有利になりやすいのが①の相続による移転です。甲が保有するA社株式以外の財産次第にはなりますが、遺産に係る基礎控除額によって相続税の負担の抑制が見込まれます。しかし、相続はいつ起こるかわかりません。今後、A社の業績が回復すれば、株価は再び上昇していくでしょう。移転時期をコントロールできないのが、この場合の難点と言えます。
では、②の譲渡による移転はどうでしょう?相続と異なり、譲渡では株式の移転時期を任意に定めることができます。将来株価が上昇すると見込まれる場合には、株価が低いうちに譲渡を行い、移転を完了させてしまえばよいのです。しかし、子は相続のときのように、株式をただもらうだけではなく、買い取りのための資金を準備しなくてはいけません。A社から資金の融通を受けたり、それでも不足する場合には、銀行等からの融資を検討したりしなくてはいけません。
こうした状況にもっとも効果的な方法が、③の贈与による移転です。贈与であれば、譲渡同様、株式の移転時期を任意に定めることができるうえに、譲渡のような株式の買い取り資金の準備も不要です。
しかし、それだと贈与税で相当持って行かれるのでは・・・?
たしかに、暦年課税制度であれば、最大50%の贈与税がかかることでしょう。そこで相続時精算課税制度(以下「本制度」といいます。)の出番なのです。今回のケースであれば、株式をすべて贈与しても、その総額は特別控除額の範囲に収まります(60株×40万円=2,400万円≦2,500万円)ので、これだけであれば、贈与税はかからないことになります。仮に、株価が45万円であったとして、贈与の総額が特別控除額を超えた(60株×45万円=2,700万円>2,500万円)としても、贈与税の負担は、超えた分の一律20%(200万円×20%=40万円)となります。
さらに、贈与後についても見て行きましょう。A社株式は子が保有することになりましたが、本制度の特徴として、贈与者である甲の相続が起こった場合には、今回贈与を受けたA社株式を甲の相続財産に含めて相続税を計算しなければなりません。しかし、このとき用いるA社株式の株価は、相続開始時点の株価ではなく、贈与時の株価とされます。したがって、贈与後の株価上昇が甲の相続税に影響を及ぼさなくなるため、子は株価を気にすることなくA社の本業に臨めるというわけです。これが、贈与による「価額据え置き」効果です。本制度に限らず、暦年課税制度でも同様の効果はありますが、今回のケースのように、贈与総額が高額になるような場合には、本制度を選択するのがよいでしょう。

 

まとめ

今後、値上がりが見込まれる不動産や株式を保有されている方については、暦年課税制度だけではなく、本制度を利用も検討されることをお勧めいたします。その際には、税理士の助言も受けながら、我が家の相続対策にあった制度選択を行っていただければと思います。

(文責:高橋 大祐)

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