父の相続の遺産分割にあたり、両親の住む家を非同居の子どもが相続すると、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減 といった優遇措置が受けられず、多額の相続税の納税が生じます。
かといって、母(配偶者)が家を相続すると、母自身の財産が増えて、二次相続の際の相続税が気になります。
ご相談内容
現状分析と改善策
具体的な原因
被相続人の配偶者が財産を相続すると、他の相続人等に比べて相続税が優遇されます。
しかしながら、その配偶者自身も元々財産を持っていると、二次相続の相続税の負担が増え、一次相続との合計で考えた場合に、かえって相続税を多く納めることにもなりかねません。
解決策
自宅を子どもが相続する際に、存続期間を母の死亡時までとする配偶者居住権を設定します。これにより、自宅の評価額から配偶者居住権として母に帰属する部分が分かれ、その結果、子どもの課税価格が引き下げられます。
さらに、母に帰属する居住権部分については、小規模宅地等の特例の適用があり、全体の課税価格の引き下げにもなりますし、母については配偶者の税額軽減の適用により、相続税が優遇されます。
また、この配偶者居住権は、母の死亡と同時に消滅するため、二次相続の相続税に影響することもありません。
本ケースでは、母が存命のうちは自宅を売却する予定もなく、相続人同士の関係も良好であったため、配偶者居住権の設定をすることになり、同時に、相続税の節税も図ることができました。
まとめ
配偶者居住権は令和2年4月より施行された新しい制度ですが、使い方によっては、相続税対策としても有用です。しかし、配偶者居住権が設定されている不動産はそのままでは売却できませんし、任意に解約しようとすると、予期せぬ税金の負担が生ずることがあります。
導入に際しては、相続税への影響だけでなく、家族のご意向やライフプランに配偶者居住権が無理なく収まるかをしっかりと見極める必要があります。
HOPグループでは、目先の節税だけにとらわれない、全体最適となる相続対策をモットーとしております。
(文責:髙橋 大祐)