こんにちは。税理士法人HOPの川村です。
私は、相続業務を担当しているため、日頃より相続のご相談をお聞かせ頂いております。相続が起こると遺産を分けることになりますが、遺産分割の方法は2通りあります。
①遺言書がある場合に遺言書のとおりに遺産を分割する「遺言による方法」
②相続人全員で話し合って遺産の分け方を決める「遺産分割協議による方法」
です。
相続人同士の関係が良好な場合は、後者の「遺産分割協議による方法」で問題なく遺産を分けることができるのですが、相続人同士の関係が良好でない場合は話し合いが難航することが多々あります。
また、遺産には分けやすい金銭だけではなく不動産や自社株も含まれます。不動産は評価額が高く遺産の大半を占めることが多いため、法定相続分通りに分けることも難しいです。
ご逝去後の10ヶ月以内に相続税の申告をする必要があるため、遺産分割協議がまとまらない場合は未分割の状態で申告をし、分け方が決まった時点で修正申告をすることになります。この場合、一回目の申告では、配偶者の税額軽減や不動産の評価額を小さくする特例を適用できないため多額の相続税が発生することが多いです。
そこで、遺産を遺す親の気持ちを反映させ遺産分割をスムーズに行えるように、生前に遺言書を備えることをお勧めする機会が多いのですが、遺言書を作成する際の注意点として、「遺留分」に配慮する必要があります。
「遺留分」とは相続人に認められている最低限の権利で法定相続分の半分となりますが、遺留分を満たさない財産を承継した相続人は権利を主張することができ、多くの遺産を承継した相続人はその分を支払う事になります。そして、この支払方法ですが、民法改正により、2019年7月1日より金銭で支払う事になりました。先に述べた通り、遺産の大半を不動産が占めるケース方が多いので支払いに充てる現金が無い場合が散見されます。そうなると相続した不動産の持分を渡す方向で話が進むことがあるのですが、この場合、不動産の持分を渡した相続人には、不動産を譲渡したように「譲渡所得税」が課税されるのです。改正により、本意ではない不動産の共有を回避できた点は良いのですが、遺留分は金銭で支払うことになったため、相続税だけでなく譲渡税も支払わなければならない「相続税と所得税のダブルパンチ!」の問題が発生しました。
相続対策をする上で、遺言書の備えが大切であることは間違いないのですが、私共は専門家として注意すべき点もしっかりとお伝えする必要があります。
(文責:川村理香)