資金繰り・財務管理の経営承継を実現した事例

ご相談内容

先代経営者の「頭の中」で行われている財務管理を見える化したいです。

3年前に先代経営者(現会長)から事業を承継しました。営業、事業遂行は任せてもらっているものの、財務面はまだ会長が担当していて資金繰りや財務の状態がよく分かっていません。

現状分析と改善策

具体的な原因

同族関係者間で事業承継が行われる場合、部分的に経営の承継が行われることがあります。

売上、経費といった損益のことは理解し易いですが、資金繰りや資金調達の部分は、先代経営者の長年の経験から「頭の中」で行われ、他の経営者に共有されていないことがあります。

この会社は、

・信用金庫との長年の付き合いから、赤字決算でも資金需要に応じて資金調達ができる

・運転資金の不足額は、会長から役員借入をしている

・法人の利益を出すよりも、役員報酬で利益を抑えるという経営方針をもっている

・定期的な月次決算は行われておらず、毎期の利益は、決算期間際に把握できる

このような状況でした。これでは、先代経営者から事業を承継した後継者が完全に経営を承継しているとは言えません。どこかのタイミングで先代経営者は引退される日が来るわけですから、資金繰り・財務管理について、計画的にその役割を承継することが必要です。

解決策

月次決算システムの導入

月次決算の報告日を設定し、毎月損益の状況と併せて、3ヶ月~6カ月先の資金繰りを定期的に確認する機会を設けること(「月次決算のシステム」の導入)を提案しました。

STEP1:会長、社長が同席する場で月次決算報告を行い、短期的な資金繰りについて情報を共有することで、後継者である社長にも損益と資金繰りについてのギャップを理解していただく

STEP2:金融機関からの資金調達をすることで、役員借入に甘えることなく、事業収支から無理なく資金を回していくための利益目標を認識してもらう

STEP3:会長から社長に対し、新たな資金調達は、社長が主導して申込と契約をするように指示してもらう

このような過程を経て、資金繰り、税務の経営承継を実現しました。

まとめ

「経営の勘」は、長年の実績に裏付けされた素晴らしい技能であり、経営者の優れた資質です。その一方、これを後継者に承継してもらうという場合に、「暗黙知」となっているため承継が困難になることが少なくありません。

資金繰り、財務管理は、入出金のタイミングを精緻に把握することで、見える化することができ、将来キャッシュフローを認識することで、経営目標が具体化されます。定期的な月次決算のシステムを導入することで、円滑な事業承継と財務体質の改善・強化を実現できます。

 

(文責:星川 望)