労務管理の厳格化が進む中、「残業を抑制しながら人材育成を行う」という課題に直面している中小企業が増えています。
この課題は、成長考課制度(評価制度)の構築と運用によって解決が可能です。
重要なのは、数値目標から入るのではなく、会社の理念やビジョンから逆算して個人の目標を設定すること。
ある建設会社の事例をご紹介します。
「最高の住まいで、家族の幸せと未来を創造する」という理念から、各部門・個人の具体的な行動目標を設定しました。
施工品質の向上から省エネ技術の習得まで、社員一人一人が今はできなくても必ず達成できる目標を掲げたのです。
経営者は「確かな技術を身につけ、お客様に寄り添える人材になってほしい」という期待を明確に言語化し、それを評価制度に組み込みました。
その結果、残業時間が大きく増えることなく、社員が主体的に業務改善や能力開発に取り組むようになりました。なぜでしょうか?
理念に基づく目標設定により、社員が求める「貢献」「承認」「成長」の3要素が自然と組み込まれたからです。
このアプローチの成功には、上司のコーチングマインドが不可欠です。
皆さんは部下との面談でどのような対話をしていますか?
数値の進捗確認だけでなく、「この目標がどのように会社の理念実現に貢献するのか」「その過程で自身はどのように成長したいのか」といった対話を重ねることで、部下の内発的動機付けを高められるのです。
成長考課制度を機能させるための3つのポイントをご紹介します。
1. 理念・ビジョンと個人目標の紐付け
2. 定量的な数値目標だけではなく、定性的な成長指標の設定(例:施工品質向上への具体的取り組み、顧客満足度向上への貢献に繋がる行動目標など)
3. 定期的(月に1回推奨)な成長対話の機会確保
労務管理と人材育成の両立は、適切な制度設計により可能です。
重要なのは、数値だけでなく「人の成長」に焦点を当て、経営者の期待を明確に示した評価の仕組みづくり。
そして何より、経営者が社員に対して「今はできなくても、必ずできるようになる」と信じ、成長志向の対話を継続することです。
(文責:平岩 大輔)