HOPグループ相続チーム行政書士の山本です。
遺言を作成するときに、「遺言執行者」を指定するケースがあります。
遺言執行者とは遺言で指定された受遺者に代わって単独で相続手続きを行うことができ、非常に強力な権限が民法で与えられています。
遺言で認知をする・遺言で相続人の排除などを行う場合は必ず遺言執行者を指定しておく必要があります。
基本的に遺言執行者は未成年や破産者以外ならだれでも指定できますが、特に士業や相続コンサルタントなどの第三者を遺言執行者に指定しておくメリットとしては、次のものがあげられます。
1. 中立・公正な立場を期待できる
家族や相続人の一員ではない第三者を指定することで、感情的な対立や不信感を回避しやすくなります。
2. 遺言内容の確実な実現
遺産分割や名義変更など、遺言の内容を正確に実行するスキルがあります。特に不動産や株式の名義変更、預貯金の解約・分配などの手続きにおいて力を発揮します。
3. 相続人の負担軽減
煩雑な手続きや他の相続人との調整を遺言執行者が代行してくれるため、遺族の精神的・時間的負担が軽くなります。
このように第三者を遺言執行者に指定するメリットはたくさんありますが、指定するにあたっては注意することがあります。
1. 事前の承諾を得ておく
遺言執行者には就任義務はないため、本人の承諾を事前に得ておくことが重要です。就任を拒否されると、別途家庭裁判所で選任する必要が生じます。
2. 費用(報酬)の取り決め
士業や相続コンサルタントが業務として遺言執行を行う場合、報酬が発生します。遺言に報酬額またはその定め方を明記しておくと、相続人間のトラブルを防げます。
3. 利害関係をチェック
士業が利害関係を持つ人物や団体と関係がある場合、公正性に疑問が生じる可能性があります。信頼できる第三者であることを確認しましょう。
4. 信頼と実績のある人物を選ぶ
遺言執行は長期間にわたることもあるため、健康状態や将来的な対応力、誠実さも重要な選定基準です。
特に報酬面に関しては、受遺者も含め遺言作成時にきちんと取り決めを行い明記することで、スムーズな遺言執行につながります。
遺言執行者の指定を盛り込んだ遺言を作成する場合は、上記のような一般的なメリットやデメリットだけでなく、遺言を残す目的や内容、ご家族や相続人の状況など、一人ひとり現状が異なることから、相続業務に精通した士業に作成を依頼することをお勧めします。
(文責:山本 百合香)